コラム
News

【心療内科薬紹介】「柴胡桂枝乾姜湯とはどういう漢方ですか?」【漢方】

医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)でございます。

当院にご興味下さり、誠にありがとうございます。

 

 

Q:「柴胡桂枝乾姜湯(さいことけいしかんきょうとう)とはどういう漢方ですか?」に、お答えします。

 

 

A:体力が弱く、冷え性、貧血気味で、動悸、息切れがあり、神経過敏な場合に用いられます。

柴胡加竜骨牡蛎湯証の虚証で、肝気鬱結による精神症状に有効です。

柴胡加竜骨牡蛎湯は、こちらのコラムをご参照ください。

https://www.pelikan-kokoroclinic.com/post-2316/

 

 

漢方薬は、「なんとなく体に優しそう」というイメージもあり、とっつきやすいところがメリットかと思います。

どうしても味が苦いのと(これも漢方によりますが)、基本的には粉であることを乗り越えていただけるのであれば、治療の選択肢の1つになると思います。

漢方薬は、保険収載(保険適応されるもの)されているものだけで100種類以上あり、心療内科、精神科といったメンタルの領域で有名な漢方もいくつもあります。

 

 

柴胡桂枝乾姜湯は、柴胡加竜骨牡蛎湯証の虚証で、肝気鬱結による精神症状に有効です。

体力が弱く、冷え性、貧血気味で、動悸、息切れがあり、神経過敏な場合に用いられます。

エキス製剤の番号は11番です。

 

 

柴胡桂枝乾姜湯は、柴胡剤の1つとして分類されます。

柴胡剤とは、柴胡が入っている方剤(処方)を言います。

柴胡(さいこ)は生薬の1つで、漢方薬を知るうえで大変重要です。

セリ科のミシマサイコ、またはその変種の根です。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%83%9E%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%B3#:~:text=%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%83%9E%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%B3%EF%BC%88%E4%B8%89%E5%B3%B6%E6%9F%B4%E8%83%A1%E3%80%81Bupleurum,%E3%81%AF%E3%82%BB%E3%83%AA%E7%A7%91%E3%81%AE%E5%A4%9A%E5%B9%B4%E8%8D%89%E3%80%82

Wikipediaにもあるように、この学名の由来はまさに日本で、ミシマとは現在の静岡県の三島に由来します。

ただ乱獲が原因で、現在日本原産のものは少なく、輸入が多くなっています。

効能は、配合によって異なり、大変幅広いのですが、特に精神領域において、疏肝解鬱といって、肝気気滞を開通させる効果があります。

目印は、肋骨の下の痛み、苦しみ、圧痛で、これを胸脇苦満(きょうきょうくまん)と言います。

特に右側の肋骨の下には肝臓がありますので、柴胡は肝臓に作用して、その痛みをとり、滞っていた気の流れを開通させ、精神安定を目指すわけです。

解毒作用とも言え、体質改善にもつながります。

西洋医学の病名で言うところの、肝機能障害、肝炎、肝硬変、胆嚢炎、胆石などの肝臓の疾患に始まり、肋膜炎、膵臓疾患、肺疾患、リンパ腺炎、そして、胃酸過多、嘔気、嘔吐、食思不振、精神不安、不眠症などの精神領域まで、幅広く用いられます。

 

 

柴胡桂枝乾姜湯は、少陽病の虚証に適しています。

ここで少陽病を簡単に解説します。

漢方の原典である傷寒論(しょうかんろん)では、急性病(熱病)の経過を6つの段階に分けており、これを六病位、または三陰三陽といいます。

三陽とは太陽病、陽明病(ようめいびょう)、少陽病の3つ、三陰とは太陰病(たいいんびょう)、少陰病(しょういんびょう)、厥陰病(けっちんびょう)の3つです。

熱病の初期は、太陽病の形で発病し、少陽病または直接陽明病に変化し、さらに三陰に進行すると考えられています。

太陽病とは、「脈浮、頭項強痛、悪寒す」(傷寒論)とあるように、脈が浮き(脈診等で判断)、頭から首が強く痛み、悪寒がする状態を指します。

このようなステージなら、漢方の代表である葛根湯などが適しています。

少陽病は、この太陽病の次のステージで、「口苦く咽乾き、目眩(めくるめく)なり」(傷寒論)とあるように、口が苦い、のどが渇く、めまいがしてふらふらする状態を指します。

少陽病で、特に虚証(元気、活気がない状態)の場合に用いられます。

 

 

原典である、傷寒論・太陽病下篇には、次のような記載があります。

「傷寒五六日、已に発汗して、またまた之を下す。胸脇満して微かに結し、小便利せず。渇して嘔せず、ただ頭汗出で、往来寒熱し、心煩するは、此れ未だ(少陽の邪)解せずと為すなり。柴胡桂枝乾姜湯これを主る。」

金匱要略・瘧病篇には、次のような記載があります。

「柴胡桂枝乾姜湯、瘧し、寒多く微かに熱あり。或いはただ寒して熱せざるを治す。」

 

 

構成生薬は、以下の通りです。

柴胡(サイコ) 6.0g

黄芩(オウゴン) 3.0g

甘草(カンゾウ) 2.0g

桂枝(ケイシ) 3.0g

牡蛎(ボレイ) 3.0g

栝楼根(カロコン) 3.0g

乾姜(カンキョウ) 2.0g

構成生薬とは、方剤を構成する生薬のことを指します。

その中で、メインとなる生薬を君薬(「君」は、もともと高位の人を指します)、次に重要な生薬を臣薬(家臣の臣ですね)、次に佐薬(「佐」は助けるという意味があります)、調整役の生薬を使薬(「使」は、仕えるといった意味があります)と言います。

 

柴胡桂枝湯の場合、君薬はもちろん柴胡で、臣薬は黄芩となります。

佐薬は甘草、桂枝となり、使薬はそれ以外となります。

柴胡と黄芩で、胸脇部の熱気の鬱滞を去ります。

牡蛎が、心煩動悸を鎮めます。

 

 

ご興味のある方は、診察時にご相談ください。

今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)をよろしくお願いいたします。