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【心療内科薬紹介】「柴胡桂枝湯とはどういう漢方ですか?」【漢方】

医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)でございます。

当院にご興味下さり、誠にありがとうございます。

 

 

Q:「柴胡桂枝湯(さいことけいしとう)とはどういう漢方ですか?」に、お答えします。

 

 

A:小柴胡湯と桂枝湯の合方です。

発熱、悪寒、頭痛、関節痛、腹痛、嘔気・嘔吐、悪心、心窩部が痞(ひ)えて緊張や疼痛がある場合に用いられます。

神経症状に用いることもあります。

 

 

漢方薬は、「なんとなく体に優しそう」というイメージもあり、とっつきやすいところがメリットかと思います。

どうしても味が苦いのと(これも漢方によりますが)、基本的には粉であることを乗り越えていただけるのであれば、治療の選択肢の1つになると思います。

漢方薬は、保険収載(保険適応されるもの)されているものだけで100種類以上あり、心療内科、精神科といったメンタルの領域で有名な漢方もいくつもあります。

 

 

柴胡桂枝湯は、小柴胡湯と桂枝湯の合方です。

発熱、悪寒、頭痛、関節痛、腹痛、嘔気・嘔吐、悪心、心窩部が痞(ひ)えて緊張や疼痛がある場合に用いられます。

神経症状に用いることもあります。

エキス製剤の番号は10番です。

 

 

柴胡桂枝湯は、柴胡剤の1つとして分類されます。

柴胡剤とは、柴胡が入っている方剤(処方)を言います。

柴胡(さいこ)は生薬の1つで、漢方薬を知るうえで大変重要です。

セリ科のミシマサイコ、またはその変種の根です。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%83%9E%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%B3#:~:text=%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%83%9E%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%B3%EF%BC%88%E4%B8%89%E5%B3%B6%E6%9F%B4%E8%83%A1%E3%80%81Bupleurum,%E3%81%AF%E3%82%BB%E3%83%AA%E7%A7%91%E3%81%AE%E5%A4%9A%E5%B9%B4%E8%8D%89%E3%80%82

Wikipediaにもあるように、この学名の由来はまさに日本で、ミシマとは現在の静岡県の三島に由来します。

ただ乱獲が原因で、現在日本原産のものは少なく、輸入が多くなっています。

効能は、配合によって異なり、大変幅広いのですが、特に精神領域において、疏肝解鬱といって、肝気気滞を開通させる効果があります。

目印は、肋骨の下の痛み、苦しみ、圧痛で、これを胸脇苦満(きょうきょうくまん)と言います。

特に右側の肋骨の下には肝臓がありますので、柴胡は肝臓に作用して、その痛みをとり、滞っていた気の流れを開通させ、精神安定を目指すわけです。

解毒作用とも言え、体質改善にもつながります。

西洋医学の病名で言うところの、肝機能障害、肝炎、肝硬変、胆嚢炎、胆石などの肝臓の疾患に始まり、肋膜炎、膵臓疾患、肺疾患、リンパ腺炎、そして、胃酸過多、嘔気、嘔吐、食思不振、精神不安、不眠症などの精神領域まで、幅広く用いられます。

 

 

柴胡桂枝湯は、太陽病から少陽病への移行期に用いられます。

太陽病と少陽病を簡単に解説します。

漢方の原典である傷寒論(しょうかんろん)では、急性病(熱病)の経過を6つの段階に分けており、これを六病位、または三陰三陽といいます。

三陽とは太陽病、陽明病(ようめいびょう)、少陽病の3つ、三陰とは太陰病(たいいんびょう)、少陰病(しょういんびょう)、厥陰病(けっちんびょう)の3つです。

熱病の初期は、太陽病の形で発病し、少陽病または直接陽明病に変化し、さらに三陰に進行すると考えられています。

太陽病とは、「脈浮、頭項強痛、悪寒す」(傷寒論)とあるように、脈が浮き(脈診等で判断)、頭から首が強く痛み、悪寒がする状態を指します。

このようなステージなら、漢方の代表である葛根湯などが適しています。

少陽病は、この太陽病の次のステージで、「口苦く咽乾き、目眩(めくるめく)なり」(傷寒論)とあるように、口が苦い、のどが渇く、めまいがしてふらふらする状態を指します。

これら、太陽病から少陽病への移行期に、柴胡桂枝湯が用いられます。

 

 

原典である、傷寒論・太陽病下篇には、次のような記載があります。

「傷寒六七日、発熱し、微かに悪寒し、支節煩疼し、微かに嘔し、心下支結し、外証未だ去らざる者は、柴胡桂枝湯之を主る。」

金匱要略・腹満寒疝病篇には、次のような記載があります。

「『外台』の柴胡桂枝湯方は、心腹卒中して痛む者を治す。」

 

 

構成生薬は、以下の通りです。

柴胡(サイコ) 5.0g

半夏(ハンゲ) 4.0g

黄芩(オウゴン) 2.0g

甘草(カンゾウ) 2.0g

桂皮(ケイヒ) 2.0g

芍薬(シャクヤク) 2.0g

大棗(タイソウ) 2.0g

人参(ニンジン) 2.0g

生姜(ショウキョウ) 1.0g

構成生薬とは、方剤を構成する生薬のことを指します。

その中で、メインとなる生薬を君薬(「君」は、もともと高位の人を指します)、次に重要な生薬を臣薬(家臣の臣ですね)、次に佐薬(「佐」は助けるという意味があります)、調整役の生薬を使薬(「使」は、仕えるといった意味があります)と言います。

 

柴胡桂枝湯の場合、君薬はもちろん柴胡で、臣薬は黄芩となります。

佐薬は半夏、人参、甘草、芍薬、桂枝となり、使薬は生姜と大棗となります。

柴胡と芍薬で、鎮静、鎮痛、自律神経調整作用が生じます。

よって、上述の通り、神経症状にも有効となるわけです。

 

 

ご興味のある方は、診察時にご相談ください。

今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)をよろしくお願いいたします。