パニック障害について 前編

今回は、パニック障害について解説していきます。

 

ICD-10でのによる記述に解説を加える形で進めていきます。

ICD-10に関する説明は、以下のコラムをご参照ください。

 

診断基準:ICD「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)」とDSM「精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」
(2019.07.27作成、09.16更新) どの精神疾患・障害の説明にも、必ず登場する診断基準が2つあります。 ICDとDSMです。 これは世界中で使用されている、代表的なものです。 今後、...

 

 

 

 

 

 

F41.0 パニック障害(エピソード(挿間)性発作性不安)

Panic Disorder(episodic paroxysmal anxiety)

 

本質的な病像は、以下なら特別な状況あるいは環境的背景にも限定されず、したがって予知できない、反復性の重篤な不安(パニック)発作である。

[解説]基本的には、突然起きるパニック発作(不安発作)が主症状となる精神障害をパニック障害と診断します。パニック発作自体は、実はパニック障害以外でも起こることがあり(例えば、うつ病など)、抑うつ気分などが主症状で、パニック発作が積極的治療の必要性が薄い程度の場合の診断名はうつ病のみとすることもあります。つまり、パニック障害の症状はあくまでパニック発作がその人が困っている症状の大部分を占め、他に症状は特にない状況で診断されます(なお、実際上の運用は、医師によって多少異なります)。

 

 

他の不安障害と同様に、主要症状は患者ごとに異なるが、動悸、胸痛、窒息感、めまいおよび非現実感(離人感あるいは現実感喪失)の突発が共通している。

[解説]パニック発作が起きた際に感じる症状(自覚症状)はほぼ共通していて、上記の動悸(心臓のドキドキ)、胸痛(胸の痛み)、窒息感(息が苦しくなる、空気を吸えないように感じる)、めまい、失神様(くらくらする)、などが有名です。

 

 

そこでほとんど必ず、死、自制心の喪失あるいは発狂への二次的な恐怖が存在する。

[解説]教科書的には、上記の自覚症状によって、「このまま死ぬのではないか?」という恐怖を生じるとされます。ただ、最近は軽症のパニック障害の方も多く、その場合は必ずしもこれを伴わないこともあるように思われます。

 

 

時に長引くことはあるが、個々の発作は通常通常数分間しか持続しない。

[解説]狭義の発作という意味では通常数分間のみですが、その後も恐怖等は続きますので、全体では1~2時間程度”苦しく”なっていることが多いように思われます。

 

 

発作の頻度と障害の経過はいずれもかなり様々である。

[解説]バリエーションは様々ありますが、いずれにしても頻度や程度が多く、強くなれば、それはパニック障害が悪化しているということですので、治療を受けた方がよいでしょう。

 

 

パニック発作に襲われた患者は、恐怖と自律神経症状が次第に高まっていくのを体験し、その結果どこにいようと、通常は急いでその場から立ち去る。

[解説]自律神経症状とは自律神経が関与した身体症状ですが、具体的には上記の動悸、胸痛、呼吸苦(窒息感)、めまい、他に手足のしびれなどです。それらと恐怖が急激に高まりますので、そこでじっとしていられるはずはなく、多くの方は座る、横になる、安心できる場所に移動するなどの行動をとります。

 

これがバスや雑踏などの特定の状況で起きると、その後患者はそのような状況を避けることがある。

[解説]場所としては、バスや雑踏もありますし、最近ですと電車、特に通勤時などの満員電車や快速などの各停車駅間が長い電車、(バスに限らず)車、エレベーターなどでもみられます。当然ですが、同じようなシチュエーションは避けようとしますので、例えば電車ですと通常より早めに出勤して空いている電車に乗ろうとしたり、快速には乗らずに各停電車に乗ろうとします。エレベーターで起きた方は階段で移動されることもあります。

 

 

同様に、頻回に起こる予見不能なパニック発作は、一人になることや公衆の場に赴くことへの恐れを生み出す。また発作になるのでないかという持続的な恐れが、しばしばパニック発作のあとに生じる。

[解説]パニック発作は、やはり家族や恋人、友人と一緒にいると起こらないことも多く、一人で行動することが怖くなります。街中に出かけるのも躊躇してしまいます。上述しましたが、パニック発作が終わっても、その後に再度生じるのではという恐怖にさいなまれます。

 

 

 

 

診断ガイドライン

 

この分類では、一定の恐怖症的状況で起こるパニック発作は、恐怖症の重篤さの表現とみなされ、診断的優先権は後者に与えるべきである。パニック障害それ自体は、F40.-のいかなる恐怖症もしない場合にのみ診断されるべきである。

[解説]別項で解説しますが、(診断上の)別の特定の恐怖症でパニック発作が生じている場合の診断は、あくまでその恐怖症となり、パニック障害の診断をつけることは原則的にはしません(上述の説明と同じ考え方です)。

 

 

確定診断のためには、自律神経性不安の重篤な発作が、ほぼ1ヶ月の間に数回起きていなければならない。
(a)客観的危険が存在しない環境において起きる
(b)既知の、あるいは予見できる状況に限定されない
(c)発作と発作の間は、不安症状は比較的欠いている(しかし、予期不安は通常認められる)
<含>パニック発作
パニック状態

[解説]上述の動悸、胸痛、呼吸苦、めまいなどが、例えば1回のみ起きたならば、それは今後続くかどうかまだ不明のため、その時点では「起きた事象はパニック発作だが、パニック障害かはまだ不明」という診断になります。

(a)極端ですが、例えば紛争地域の戦場にいれば、常に不安、恐怖下に置かれ、自律神経症状が生じるのもある意味当然となります(よって、それを精神障害とはみなさないという意味です)。

(b)上述の通り、特定の状況下でのものは、診断上その恐怖症となります。

(c)発作と発作の間も、不安や抑うつ気分等が認められる場合は、例えば全般性不安障害やうつ病など、他の診断がより適切であるとなります。

 

 

鑑別診断

 

すでに指摘したように、パニック障害は、確定した恐怖症性障害の部分症状として起きるパニック発作から区別されなければならない。パニック発作は、とりわけ男性において、うつ病性障害から二次的に生じることがあり、うつ病性障害の診断基準が同時満たされるならば、パニック障害を診断とするべきではない。
[解説]繰り返しになりますが、パニック障害はあくまで特定の状況に限定されない、パニック発作が主体の病状である状態に対して診断されるものとなります。実際の治療上も、特に背後にうつ病が隠れていないかは注意深くみていく必要があります。

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