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F4 不安障害

 

序論

 

神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害を1つの大きな包括群にまとめた。なぜなら、これらは神経症概念と歴史敵に関連しており、その大部分(どのくらいかは不明だが)が心理的原因と関連しているからである。ICD-10の全般的な序論で述べたように、神経症概念は主な構成原理として残したのではなく、なお本書の使用者自身の用語法で神経症とみなしたいような障害の同定が容易にできるよう配慮したものである。

これらの障害は、特にプライマリケアでよくみられるあまり重症でない症例では、複数の症状が混在しているのが普通である(抑うつと不安の共存が最多)。どちらが優勢な症状であるかを決める努力をすべきであるが、そうすることが不自然であるような抑うつと不安が混在する症例のためのカテゴリーが用意されている。

 

F40

恐怖症性不安障害 Phobicanxietydisorders

 

これらの障害では通常危険ではない、(患者の外部の)ある明確な状況あるいは対象によってのみ、あるいは主としてそれによって不安が誘発される。その結果、これらの状況あるいは対象は特徴的な仕方で回避される。恐怖症性不安は他の型の不安から主観的にも、生理的にも、そして行動的にも区別することはできず、軽い落ち着きのなさから著しい恐怖まで重症度はさまざまである。患者の関心は、動悸あるいはめまいのような個々の症状に集中することもあり、しばしば、死ぬこと、自制を失うこと、あるいは気がくるってしまうことへの二次的な恐怖と関連している。他の人々が問題となっている状況を危険とも脅威とも見なさいことを知っていても、その不安は軽減しない。恐怖症を生じる状況に入ることを考えただけでも通常、予期不安は生じる。

恐怖症の対象あるいは状況が患者にとって外部のものであるという基準の採用は、疾病(疾病恐怖)と醜形(醜形恐怖)の存在に関連した恐怖の多くがF45.2「心気障害」に分類されることを意味する。しかしながら、疾患に対する恐怖が、感染や汚染にさらされる可能性によって、主としてかつ反復して生じるか、あるいは恐怖が単に医学的処置(注射、手術など)が医療施設(歯科医院、病院など)に対するものならば、F40.-のカテゴリーが適切であろう(通常はF40.2「特異的(個別的)恐怖症」。

恐怖症性不安はしばしば抑うつと合併する。恐怖症性不安が既に存在する場合は、ほとんど常にうつ病エピソードの併発中さらに増悪する。ある種のうつ病エピソードは、一過性の恐怖症性不安を伴っており、抑うつ気分はしばしばある種の恐怖、特に広場恐怖を伴っている。恐怖症性不安とうつ病エピソードの二つの診断が必要か、あるいは一つで良いかは、一方の障害が明らかに他に先行しているかどうかと、診断の際に一方が明らかに優勢であるかどうかによって決定される。もし恐怖症状が初めて現れる前に、うつ病性障害の診断基準が満たされるならば、後者と診断すべきである。

社会恐怖以外の大部分の恐怖症性障害は、男性におけるよりも女性により多く見られる。

この分類では、特定の恐怖状況で起きるパニック発作は恐怖症の重篤者の表現とみなされ、診断的優勢権は後者に与えられるべきである。主診断としてのパニック障害は、F.40-に上げられたいかなる恐怖症も認められない場合のみ診断すべきである。

 

F40.0 広場恐怖(症) Agoraphobia

「広場恐怖」という用語はここでは、初めて紹介された当時よりも、そして現在でもなおいくつかの国で使われているよりも、より広い意味で用いられている。現時点では、単に開放空間に対する恐怖ばかりでなく、群衆がいるとか、安全な場所(通常は家庭)にすぐ容易に逃げ出すことが困難であるなど、空間に関連する状況に対する恐怖も包括されている。したがってこの用語は、家を離れること、店、雑踏および公衆の場所に入ること、あるいは列車かバスか飛行機で一人で旅行することに対する恐れなどを含む。相互に関連し、しばしば重複する恐怖症の一群に当てはまる。不安の重症度や回避行動の程度は一定しないが、これは恐怖症性障害の中で最も無力化をもたらすもので、完全に家にこもってしまう患者もいる。多くの患者は、公衆の面前で倒れ、孤立無援となることを考えて恐怖に襲われる。直ちに利用できる出口のないことが、これら多くの広場恐怖の状況の鍵となる特徴である。患者は大抵女性であり、発症は通常成人早期である。抑うつ症状、強迫症状、及び社会恐怖があっても良いが、臨床像を支配するものではない。効果的な治療が行われないと、広場恐怖は通常動揺性を示すもののしばしば慢性となる。

 

診断ガイドライン

確定診断のためには、以下のすべての基準が満たされなければならない。

(a)心理的症状あるいは自律神経症状は、不安の一次的発現でなければならず、妄想あるいは強迫思考のような他の症状に対する二次的なものであってはならない。

(b)不安は、以下の状況のうち少なくても二つに限定され(あるいは主に生じ)なければならない。ー雑踏、公衆の場所、家から離れての旅行、及び一人旅。

(c)恐怖症的な状況の回避が現に、あるいは以前から際立った特徴でなければならない。

 

鑑別診断

広場恐怖患者の中には、一貫して彼らの恐怖症的な状況を回避することができるので、ほとんど不安を体験しない者もいることに留意しなければならない。抑うつ、離人症、強迫症状及び社会恐怖などの他の症状が存在しても、それらが臨床像をして支配するものなければ、広場恐怖の診断は無効ではない。しかしながら、最初に恐怖症症状が現れた時に患者がすでに著しく抑うつ的であったなら、うつ病エピソードを主診断とする。これは遅発性の症例でより一般的である。

広場恐怖的な状況にある際は多くの場合、パニック障害の有無が、第5桁のコードによって記録される。

F40.00 パニック障害を伴わないもの

F40.01 パニック障害を伴うもの

<含>広場恐怖を伴うパニック障害

 

F40.1 社会(社交)恐怖(症) Socialphobias

社会恐怖は青年期に好発し、比較的少人数の集団ないで(雑踏とは対照的に)他の人々から注視される恐れを中核とし、社交場面を普通回避するようになる。他のほとんどの恐怖と異なり、社会恐怖は男女同程度に見られる。これらは限定していることも(すなわち、人前での食事、あるいは人前での発言、あるいは異性と出会うこと)、あるいは拡散して家族以外のほとんど全ての社交状況を含んでいることもある。人前での嘔吐の恐れが重要なこともある。ある文化ないでは直接目と目が会うことが、特にストレスとなることがある。社会恐怖は通常、低い自己評価と批判されることに対する恐れと関連している。赤面、手の震え、悪心あるいは尿意頻回を訴えることもあり、時として、自分の不安の二次的な発現の一つに過ぎないものを、一時的な問題と確信している。症状はパニック発作へと進展する可能性もある。回避はしばしば顕著であり、極端な場合はほとんど完全な社会的孤立でいることがある。

 

診断ガイドライン

確定診断のためには、以下のすべての基準が満たされなければならない。

(a)心理的症状、行動的症状あるいは自律神経症状は、不安の一次的発現であり、妄想あるいは強迫思考のような他の症状に対する二次的なものであってはならない。

(b)不安は、妄想あるいは強迫思考のような他の症状に対する二次的なものであってはならない。

(c)恐怖症的状況を常に可能な限り回避しようとする。

<含>対人恐怖(amthropophobia)

   社会神経症

 

鑑別診断

広場恐怖やうつ病性障害は、しばしば顕著となり、両者とも患者を「家に引きこもり」にすることがある。社会恐怖と広場恐怖の鑑別が非常に難しい場合は、広場恐怖を優先すべきである。患者の抑うつ症状が明確に同定できなければ、うつ病の診断を下すべきではない。

 

F40.2 特異的(個別的)恐怖症 Specific(isolated)phobias

これらは特定の動物への接近、高所、雷、暗闇、飛行、閉所、公衆便所での排尿あるいは排便、特定の食べ物の摂取、血液あるいは外傷の目撃、特定の疾患の罹患に対する恐れのような、極めて特異的な状況に限定して見られる恐怖症である。誘発状況ははっきりしているが、広場恐怖あるいは社会恐怖の場合と同様に、その状況に接するとパニック状態が誘発されることもある。特異的な恐怖症は通常小児期あるいは成人早期に生じ、治療を受けないでいると、何十年も持続することがある。その結果生じる社会的不利の程度は、患者がその恐怖状況をどの程度回避できるかに依存する。恐怖症的な状況への恐れは、広場恐怖とは対照的に、動揺する傾向はない。放射線による病気と性病感染が疾病恐怖の一般的な対象であり、より最近ではエイズである。

 

診断ガイドライン

確定診断のためには、以下のすべての基準が満たされなければならない。

(a)心理的症状あるいは自律神経症状は、不安の一次的発現であり、もう思想あるいは強迫思考のような他の症状に対する二次的なものであってはならない。

(b)不安は、特定の恐怖症の対象や状況の存在に限定して生じなければならない。

(c)恐怖症的状況は可能な限り回避される。

<含>高所恐怖

動物恐怖

閉所恐怖

試験恐怖

単一恐怖

 

鑑別診断

広場恐怖や社会恐怖と対照的に、通常他の精神医学的症状を欠いている。血液・外傷恐怖は頻脈よりはむしろ徐脈と時折失神を起こすことで、他の恐怖から区別される。癌、心疾患あるいは性病感染のような特定の疾患に対する恐れは、これらの疾患に罹患するかもしれない特定の状況と関連しなければ、心気障害に分類されるべきである。疾患に対する確信が妄想的な強さに達すれば、診断は妄想性障害である。他者には客観的に気づかれない。身体の特定の一部(しばしば顔面)あるいは複数の部位に以上あるいは醜形があると確信している患者は、確信の強度と持続に応じて、心気障害か妄想性障害に分類すべきである。

 

F40.8 他の恐怖症性不安障害

 

F40.9 恐怖性不安障害、特定不能のもの

 

F41 他の不安障害

 

不安の発言がこれらの障害の主な症状であり、何らかの特別の周囲状況に限定されない。明らかに二次性のものであるか、あるいは重篤でないならば、抑うつ症状と強迫症状、さらに若干の恐怖症性不安の要素すら認められることもある

 

F41.0 パニック障害(エピソード(挿間)性発作性不安)

Panic Disorder(episodic paroxysmal anxiety)

本質的な病像は、以下なら特別な状況あるいは環境的背景にも限定されず、したがって予知できない、反復性の重篤な不安(パニック)発作である。他の不安障害と同様に、主要症状は患者ごとに異なるが、動悸、胸痛、窒息感、めまいおよび非現実感(離人感あるいは現実感喪失)の突発が共通している。そこでほとんど必ず、死、自制心の喪失あるいは発狂への二次的な恐怖が存在する。時に長引くことはあるが、個々の発作は通常通常数分間しか持続しない。発作の頻度と障害の経過はいずれもかなり様々である。パニック発作に襲われた患者は、恐怖と自律神経症状が次第に高まっていくのを体験し、その結果どこにいようと、通常は急いでその場から立ち去る。これがバスや雑踏などの特定の状況で起きると、その後患者はそのような状況を避けることがある。同様に、頻回に起こる予見不能なパニック発作は、一人になることや公衆の場に赴くことへの恐れを生み出す。また発作になるのでないかという持続的な恐れが、しばしばパニック発作のあとに生じる。

 

診断ガイドライン

この分類では、一定の恐怖症的状況で起こるパニック発作は、恐怖症の重篤さの表現とみなされ、診断的優先権は後者に与えるべきである。パニック障害それ自体は、F40.-のいかなる恐怖症もしない場合にのみ診断されるべきである。確定診断のためには、自律神経性不安の重篤な発作が、ほぼ1ヶ月の間に数回起きていなければならない

(a)客観的危険が存在しない環境において起きる

(b)既知の、あるいは予見できる状況に限定されない

(c)発作と発作の間は、不安症状は比較的欠いている(しかし、予期不安は通常認められる)

<含>パニック発作

   パニック状態

 

鑑別診断

すでに指摘したように、パニック障害は、確定した恐怖症性障害の部分症状として起きるパニック発作から区別されなければならない。パニック発作は、とりわけ男性において、うつ病性障害から二次的に生じることがあり、うつ病性障害の診断基準が同時満たされるならば、パニック障害を診断とするべきではない。

 

F41.1 全般性不安障害 Generalizedanxietydisorder

本質的な病像は全般的かつ持続的であるが、極めて優勢であっても、いかなる特殊な周囲の状況にも限定されない(すなわち「自由に浮動する」)不安である。他の不安障害と同様に、主要症状は極めて様々であるが、たえずいらいらしている、振戦、筋緊張、発汗、頭のふらつき、動悸、めまいと心窩部の不快などの訴えがよく認められる。患者か身内がすぐにでも病気になるのではないか、あるいは事故に遭うのではないかという恐怖が様々な他の心配事や不吉な予感とともに、しばしば口にされる。この障害は女性により多く、しばしば慢性の環境的ストレスと関連している。その経過は様々であるが、動揺し、慢性化する傾向を示す。

 

診断ガイドライン

患者は少なくとも数週、通常は数ヶ月、連続してほとんど毎日、不安の一次症状を示さなければならない。それらの症状は通常、以下の要素を含んでいなければならない。

(a)心配(将来の不幸に関する気がかり、「イライラ感」、集中困難など)

(b)運動性緊張(そわそわして落ち着きのなさ、筋緊張性頭痛、振戦、身震い、くつろげないこと)

(c)自律神経性過活動(頭のふらつき、発汗、頻脈あるいは呼吸促迫、心窩部不快、めまい、口渇など)

小児では頻回に安心させる必要があったり、繰り返し身体的訴えをすることがあるかもしれない。

他の症状、とりわけ抑うつが一過性に(一度につき2、3日間)出現しても、主診断として全般性不安障害を除外することにはならないが、患者はうつ病エピソード、恐怖症性不安障害、パニック障害、あるいは強迫性障害の診断基準を完全に満たしてはならない。

<含>不安神経症

   不安反応

   不安状態

<除>神経衰弱

 

F41.2 混合性不安抑うつ障害 Mixedanxietyanddepressivedisorder

このカテゴリーは、不安症状と抑うつ症状が共に存在するが、どちらのタイプの症状も別々に診断することを正当化するほど重症でないときに用いるべきである。重篤な不安が軽い抑うつと同時認められる場合は、不安あるいは恐怖症性障害の中の、これとは別のカテゴリーが用いられるべきである。抑うつ症状と不安症状の両方が存在し、かつ別個の診断を正当化するほど重篤であるならば、両障害を記録すべきで、このカテゴリーを用いるべきではない。記録する際の実用的な理由から、ただ一つの診断しか許されないならば、抑うつの診断を優先すべきである。いくつかの自律神経症状(振戦、動悸、口渇、胃の激しい動きなど)は、絶えず間欠的にせよ必ず存在する。単に心配や過度の気遣いが自律神経症状なしに存在するならば、このカテゴリーを使用すべきではない。この障害の基準を満たす症状が、著しい生活文化やストレスとなる生活上の出来事と密接に関連して出現するならば、「適応障害」のカテゴリーを用いるべきである。

比較的軽い症状がこのように混合している患者は、プライマリケアでしばしば認められるが、もっと多くの患者が住民一般の中に存在し、医学的または精神科で注意を引くに至っていない。

<含>不安うつ病(軽度のものあるいは持続的でないもの)

<除>持続性不安うつ病(気分変調症)

 

F41.3 他の混合性不安障害 Othermixedanxietydisorders

このカテゴリーは、全般性不安障害の基準を満たし、かつF40-49の他の障害の主要な特徴(しばしば短期間しか続かないが)をもつが、その基準を完全に満たさないものに対して用いるべきである。他の障害の最も一般的な例は、強迫性障害、解離性障害、身体化障害、鑑別不能型身体表現性障害、心気障害である。もしこの障害の基準を完全満たす症状が、著しい生活変化或いはストレスの強い生活上の出来事に見せずに関連を持って生じるならば、「適応障害」のカテゴリーを用いるべきである。

 

F41.8 他の特定の不安障害 Otherspecifiedanxietydisorders

<含>不安ヒステリー

 

F41.9 不安障害、特定不能のもの AnxietyDsiorder,unspecified

<含>特定不能の不安

 

F42 強迫性障害 Obsessive-compulsivedisorder

この障害の本質的病像は、反復する強迫思考あるいは強迫行為である〔簡潔にするために、症状に言及する際は「強迫性ー制縛性(obsessive-compulsive)」の代わりに「強迫性(obsessional)」を用いることにする〕。強迫思考は常同的な形で、繰り返し患者の心に浮かぶ観念、表象あるいは衝動である。強迫思考はほぼ常に苦悩をもたらすものであり(なぜなら、それらは暴力的であるか、わいせつであるか、あるいは単に無意味なものと認識されるからである)、患者はしばしばその思考に抵抗を試みるが成功しない。しかしながら、強迫思考は、本人の意志に反した、そしてしばしば嫌なものであるにも関わらず、自分自身の思考として認識される。強迫行為あるいは強迫儀式は何度も繰り返される常同行為である。それらは本来愉快なものではなく、また本質的に有用な課題の達成に終わることもない。

患者は、客観的にはありそうもない出来事を、しばしば自分に有害であったり自分が原因で起こったと考えているが、それを防止しているのだと思っている。必ずではないが、通常患者はこの行為を無意味で効果がないと認識し、繰り返し抵抗しようとする。ひどく長期化した症例では、抵抗がごくわずかのこともある。自律神経性の不安症状はしばしば存在するが、しかし明らかな自律神経興奮はなく内的あるいは精神的に緊張した苦痛もよく認められる。強迫症状、とりわけ強迫思考はうつ病と密接に関連している。強迫性障害の患者はしばしば抑うつ症状を有し、反復性うつ病性障害の患者は、うつ病エピソードの間に強迫思考を発展することがある。いずれの場合でも、一般的に抑うつ症状の重症度の変化は、強迫症状の重症度の変化と並行している。

強迫性障害は、男女で同頻度にみられ、その基礎となっている人格にはしばしば顕著な制縛て的な特徴が存在する。発症は通常小児期か成人早期である。経過は様々であり、著しい抑うつ症状なしに慢性化しがちである。

 

診断ガイドライン

確定診断のためには、強迫症状あるいは強迫行為、あるいはその両方が、少なくても2週間連続してほとんど毎日存在し、生活する上での苦痛か妨げで妨げの原因でなければならない。強迫症状は以下の特徴を持っているべきである。

(a)強迫症状は患者自身の思考あるいは衝動として認識されなければならない。

(b)もはや抵抗しなくなったものが他にあるとしても、患者が依然として抵抗する思考あるいは行為が少なくとも一つなければならない。

(c)施工あるいは行為の遂行は、それ自体楽しいものであってはならない。

(d)思考、表象あるいは衝動は、不快で反復性でなければならない。

<含>制縛神経症(anankasticneurosis)

強迫神経症(obsessionalneurosis)

強迫性神経症(obsessive-compulsiveneurosis)

 

鑑別診断

強迫性障害とうつ病性障害の鑑別診断は、これらの二つの症状が頻繁に同時に起こるので困難なことがある。急性エピソードの障害では、最初に出現した症状に優先権を与えるべきである。両方が認められるが、どちらも優勢ではない場合、通常はうつ病一次性と見なすのが良い。慢性障害では、他方の症状なしに持続する症状を優先すべきである。

時に起きるパニック発作や軽い恐怖症性症状は、診断の妨げとはならない。しかしながら、統合失調症、トゥレット症候群、あるいは器質性精神障害において発展する強迫症状は、それらの病態の一部とみなすべきである。

強迫思考と強迫行為は普通共存するものであるが、反応する治療が異なることがあるので、患者によってはどちらかが優位が特定できれば有益である。

 

F42.0 強迫思考あるいは反復思考を主とするもの Predominantlyobsessionalthoughtsorruminations

これらは、観念、心像あるいは行動への衝動の形をとることがある。その内容は非常に変化に富むが、ほとんど常に患者に苦悩を与えるものである。例えば女性が、愛する子供を殺す衝動については打ち勝つことができなくなるかもしれないという恐怖や、反復する心像の、わいせつであったり、冒涜的であったりする自我違和的な性質に悩まされることもある。時折その観念は、考える価値もない二者択一に対する際限のない似非哲学的な熟考を含み、全く無益なものに過ぎない。このように二者択一に対する優柔不断の熟考は、他の多くの強迫反芻の重要な要素であり、しばしばそれに伴い日々の生活における支えであるが必要な決定を行うことができなくなる。

強迫反芻とうつ病の関係は、とりわけ密接である。強迫性障害の診断は、反芻がうつ病性障害のない時に生じるか持続する場合にのみ選ぶべきである。

 

F42.1 強迫行為(強迫儀式)を主とするもの 

大部分の強迫行為は、清潔にすること(特に手洗い)、潜在的に危険な状況が発展することがなくなったことを保証するための確認、あるいは整理整頓に関連している。表面に現れた行動の基底には、通常患者への、あるいは患者が引き起こす危険に対する恐怖が存在し、儀式行為はこの危険を避けるための無効な、あるいは象徴的な試みである。患者は強迫儀式行為に毎日何時間も費やし、時より顕著な決断不能と緩慢さとが結びつく。全体として脅迫行為は男女同程度にみられるが、手洗いの儀式は女性に、反復のない緩慢さは男性に多い。

脅迫儀式行為は、強迫思考ほどうつ病と密接には関連しておらず、行動療法により反応しやすい。

 

F42.2 強迫思考と強迫行為が混在するもの

大多数の脅迫患者は、強迫思考と脅迫行為の両者の要素を持つ。この下段カテゴリーは、両者が同等に顕著である場合に用いるべきであり、そのことが多いが、思考と行為とは反応する治療が異なることもあるので、一方が明らかに優勢な場合は一方のみを特定することが有益である。

 

F42.8 他の強迫性障害

 

F42.9 強迫性障害、特定不能のもの

 

F43 重度ストレス反応〔重度ストレスへの反応〕及び適応障害

このカテゴリーは、症候学と経過を根拠に同定しうるだけでなく、急性ストレス反応を引き起こすストレスの非常に多い生活上の出来事、あるいは適応障害に至る持続的で不快な境遇をもたらす著しい生活変化、という二つの原因となる影響のどちらかを根拠にしても同定できる障害を含む点で、他のカテゴリから区別される。あまり強くない心理社会的ストレス(「生活上の出来事」)は、本書の他の部分に分類されている非常に広範な障害の発症を誘発したり、発症の一因となるかもしれない。しかしストレスの病因(・・・)は必ずしも明らかでなく、個々の症例を見れば、しばしば(・・・)脆弱性に依存していることがわかるだろう。言い換えるならば、ストレスまたは障害の発症と形態を説明するのに必要でなければ十分でもな(・・・) それとは対照的に、このカテゴリに集められた障害は、急性のストレスあるいは持続的な外傷の直接的結果として常に生じると考えられるものである。ストレスの多い出来事あるいは持続する不快な境遇は、一時的かつ決定的な(・・・)要因であり、その衝撃なしには障害は起こらなかっただろうと考えられるものである。小児期、青年期を含むあらゆる年齢層で見られる重度ストレスへの反応と適応障害が、このカテゴリに含まれる。

急性ストレス反応と適応反応を構成する個別的な症状のそれぞれは他の障害でも認めうるが、症状の発現の仕方には、いくつかの固有の特徴がこれらの状態を臨床的な単位として包括することを正当化している。この節の3番(・・・)ー心的外傷後ストレス障害ーは、比較的特異的かつ特徴的な臨床的病像示す。

したがってこれらの障害は、重度のあるいは持続的なストレスに対する不適応反応とみなすことができるもので、その際適切な対処機制を妨げるために、社会機能の問題が生じる。

ステルス反応あるいは適応障害の発症と時間的に密接な関連がある、処方薬物の大量服薬に代表される自傷行為は、ICD10・第XX章の付加コードによって記録すべきである。これらのコードは自殺か「偽装自殺」かの鑑別を必要とせず、何も自傷という一般的なカテゴリに含まれる。

 

F43.0 急性ストレス反応

他に明らかな精神障害を認めない個人において、例外的に強い身体的及び又は精神的ストレスに反応して発現し、通常数時間か数日以内で収まる著しく重篤な一過性の障害である。ストレスの原因は、患者あるいは愛する人(びと)の安全あるいは身体的健康に対する重大な脅威(例えば自然災害、事故、戦闘、暴行、強姦)を含む圧倒的な外傷体験なる場合もあり、肉親との死別が重なること、あるいは自宅の火災のような、患者の社会的立場や人間関係の非常に突然かつ脅威的な変化である場合もある。身体的消耗あるいは器質的要因(例えば老齢)があると、この障害を起こす危険が高まる。

個人の脆弱性と対処能力が急性ストレス反応の発生と重症度に関連しており、非常に強いストレスにさらされた全ての人々がこの障害を起こすわけではないという事実によって、それが立証される。症状は著しい変異を示すが、典型的な例では意識野のある種の狭窄と注意の狭小化、刺激を理解することができないこと、及び失見当識を伴った、「困惑(daze)」と言う初期状態を含んでいる。この状態の後に、周囲の状況からの引きこもりの増強(解離性昏迷)にまでいたる。パニック不安の自律神経徴候(頻脈、発汗、紅潮)が認められるのが普通である。症状は通常、ストレスの強い刺激や出来事の衝撃から数分以内に出現し、23日以内(しばしば数時間以内)に消失する。そのエピソードの部分的あるいは完全な健忘を認めることがある。

 

診断ガイドライン

例外的に強いストレス因衝撃と発症との間に、即座で明らかな時間的関連がなければならない。発症は通常、直後ではないにしても、数分以内である。

それに加え症状は、

(a)混合した、しじゅう変動する病像を呈する。初期「困惑」状態に加えて、抑うつ、不安、激怒、絶望、過活動、及び引きこもりの全てが見られることがあるが、一つのタイプの症状が長い間優勢であることはない。

(b)ストレスの多い環境からの撤退が可能な場合、急速に(せいぜい数時間以内で)消失する。ストレスが持続するか、その性質上取り消すことができない場合、症状は通常24から48時間後に軽減し始め、通常約三日後に最小限となる。

この診断は、「特定のパーソナリティ障害」を除く他の精神科で期障害の診断基準を満たす症状を既に示している個人においては、症状の突然の増悪に当てはめるために用いてはならない。しかしながら、精神科的障害の既往があっても、この診断の使用は許される。

<含>急性危機反応

   戦闘疲労

   危機状態

   精神的ショック

 

F43.1 心的外傷後ストレス障害 Post-traumaticstressdisorder

ほとんど誰にでも大きな苦悩を引き起こすような例外的に著しく脅威をもたらす破壊的な性質を持った、ストレス性の出来事あるいは状況(短期間もしくは長期間持続するもの)に対する遅延したおよび/または遅延した反応の形で生じる(すなわち、自然災害又は人工災害、激しい事故、他人の

 

<途中>

 

F43.2 適応障害 Adjustmentdisorder

主観的な苦悩と情緒障害の状態であり、通常社会的な機能と行為を妨げ、重大な生活の変化に対して、あるいはストレス性の生活上の出来事(重篤な疾患の存在あるいはその可能性を含む)の結果に対して順応が生じる時期に発生する。ストレス因は(死別、分離体験によって)個人の人間関係網が乱されたり、あるいは社会的援助や価値のより広範な体系を侵したり(移住、亡命)することがある。ストレス因は個人ばかりでなく、その集団あるいは地域社会を巻き込むこともある。

個人的素質あるいは脆弱性はF43.-の他のカテゴリーにおけるよりも、適応障害の発症の危険性と症状の形成に大きな役割を演じている。しかしながら、ストレス因がなければこの状態は起こらなかっただろうと考えられる。症状は多彩であり、抑うつ気分、不安、心配(あるいはこれらの混合)、現状の中で対処し、計画したり続けることができないという感じ、及び日課の遂行が少なからず障害されることが含まれる。患者は劇的な行動や突発的な暴力を起こしてしまいそうだと感じるが、そうなることはめったにない。しかしながら、行為障害(例えば攻撃的あるいは非社会的行動)が、特に青年期では、適応障害に関連する症状となることがある。いずれの症状もそれ自体では、より特異的診断を正当化するほど重症であったり顕著ではない。小児例では夜尿症、幼稚な話し方、指しゃぶりのような退行的現象が、症状パターンの一つとなることがしばしばある。これらの描像が優勢な時には、F43.23が用いられるべきである。

発送は通常ストレス性の出来事、あるいは生活の変化が生じてから一ヶ月以内であり、賞状の持続は遷延性抑うつ反応(F43.21)の場合を除いて通常6ヶ月を超えない。症状が6ヶ月以上持続するならば、診断は現在の臨床病像により変更すべきであり、どのような持続性のストレスもICD-10・第ⅩⅩⅠ章のZコードの1つを用いてコード化することができる。

当の個人の属する文化にふさわしい程度の、そして通常6ヶ月を超えない期間の正常な士別飯能のために医学的あるいは精神医学的なサービスを受けても、この書のコードを用いるべきではなく、ICD-10・第ⅩⅩⅠ章のコード、たとえば、Z63.4「家族の失踪あるいは死」に加えてZ71.9「カウンセリング」あるいはZ73.3「分類不能のストレス」などのように記録すべきである。いかなる持続期間の悲嘆反応であっても、その形式や内容から異常と考えられる場合は、F43.22、F43.23、F43.24、あるいはF43.25のコードを用いるべきであり、6ヶ月以上経過しても以前強度で持続しているものは、F43.21「遷延性抑うつ反応」とするべきである。

 

診断ガイドライン

診断は、以下の諸項目間の関連の注意深い評価に基づく。

(a)症状と形式、内容および重症度。

(b)病歴と人格。

(c)ストレス性の出来事、状況、あるいは生活上の危機。

第三の項目の存在は明確に確認されるべきであり、強力な、推定的であるかもしれないが、それな心証が起こらなかったという証拠がなければならない。それなしに障害が起こらなかったという証拠がなければならない。ストレスが相対的に小さいか、あるいは時間的結合(3ヶ月未満)を立証することができないならば、現症に応じて他のどこかに分類すべきである。

 

<含>カルチャーショック

   悲嘆反応

   小児にホスピタリズム

<除>小児期の分離不安障害(F93.0)

 

適応障害の診断基準が満たされるならば、臨床携帯あるいは支配的な病状は第5桁の数字を用いて特定することができる。

 

F43.20 短期抑うつ反応

1ヶ月を超えない一過性の軽症抑うつ状態。

 

F43.21 遷延性抑うつ反応

ストレスの多い状況に長い間晒されたことへの反応として起こるが、持続は2年を超えない軽症抑うつ状態。

 

F43.22 混合性不安抑うつ反応

不安と抑うつ症状の両方が顕著だが、混合性不安抑うつ障害(F41.2)や他の混合性不安障害(F41.3)に分類されるほど重くない。

 

F43.23 主として他の情緒の障害を伴うもの

症状は通常、不安、抑うつ、苦悩、緊張そして怒りというように、いくつかの型の情緒変化である。不安と抑うつの症状は混合性不安抑うつ障害(F41.2)あるいは他の混合性不安障害(F41.3)の診断基準を満たすかもしれないが、他のより特定のうつ病性障害あるいは不安障害と診断されるほどには優位ではない。このカテゴリーは、夜尿症や指しゃぶりのような行動を認める小児の反応に対しても用いるべきである。

 

F43.24 主として行為の障害を伴うもの

主な障害が、たとえば攻撃的なあるいは反社会的行動に至る青年期の悲哀反応のように、行為を含むもの。

 

F43.25 情緒及び行為の混合性障害を伴うもの

情緒面の症状と行為障害の両者が顕著である。

 

F43.28 他の特定の症状が優勢なもの

 

F44 解離性(転換性)障害 Dissociative(conversion) disorders

解離性(あるいは転換性)障害が共有する共通の主題は、過去の記憶、同一性と直接的感覚、及び身体運動のコントロールの間の正常な統合が部分的あるいは完全に失われることである。直接的注意の対象としてどのような記憶と感覚が選択されるか、そしてどのような運動が遂行されるかについて、正常ではかなりの程度の意識的コントロールが行われる。解離性障害においては、意識的で選択的コントロールを行う能力が、日ごとにあるいは時間ごとにする変化するほど損なわれていると推定できる。ある機能の喪失がどの程度随意的コントロールの基にあるかを評価するのは、通常非常に困難である。

これらの障害は以前から様々なタイプの「転換ヒステリー」として分類されてきたが、「ヒステリー」という言葉は、さまざまな意味を持つために、現在では可能な限り使用を下げることが最良と思われる。ここに記述した解離性障害は、起源において心因性であり、トラウマ的な出来事、解決し難く耐え難い問題、あるいは障害された対人関係と時期的に密接に関連していると推定される。したがって、耐え難いストレスに対処する患者のやり方に関して解釈したり仮定したりすることがしばしば可能であるが、「無意識的な動機」や「二次的利得」のような、何が一つの特別の理論から得られた概念は死んだのためのガイドラインや基準には含まれない。

「転換」という言葉は、これらの障害のいくつかに広く使われており、患者が解決できない問題と葛藤により生じた不快な感情がどのようにであれ、その症状に置き換わることを意味する。

解離状態の発症と終了は突然であるとしばしば報告されるが、催眠術や除反応のような意図された相互作用ないし処置の間を除いては、そのような観察がなされることは稀である。解離状態の変化や消失が、このような処置の際に限られることもある。解離状態のすべてのタイプは数週間ないし数ヶ月後には寛解する傾向があり、特に発症がトラウマ的な生活上の出来事と関連しているならばそうである。解決不能な問題や対人関係上の困難と関連しているならば、より慢性的な状態、特に麻痺や知覚脱失が(時に非常に緩徐に)発展することがある。精神科的な診断を受ける以前に1~2年以上持続した解離状態は、しばしば治療に抵抗する。

解離性障害の患者は、他人には明らかにわかる問題や困難をしばしば強く否認する。患者が自分自身で問題を認めたとしても、全てそれを解離症状のせいにすることもある。

離人症状と現実感喪失はここには含まれない。なぜなら、これらの症状については人格的同一性の限られた側面しか通常は障害されず、感覚、記憶、運動の遂行に関する損失はないからである。

 

診断ガイドライン

確定診断のためには、以下のことが存在しなければならない。

(a)F44.-の個々の障害を特定する臨床的病像。

(b)症状を説明する身体障害の証拠がないこと。

(c)ストレス性の出来事や問題、あるいは障害された対人関係と時期的に明らかに関連する心理的原因の証拠(たとえ患者によって否定されても)。

強く疑われることはあっても、心理的原因の各賞を見出すことは難しいこともある。中枢あるいは末梢神経系の既知の障害がある場合、解離性障害の診断には十分に用心して下さなければならない。心理的原因の証拠がない場合、診断は暫定的なものにとどまるべきで、身体的及び心理的な両側面の検索を続けるべきである。

<含>転換ヒステリー

   転換反応

   ヒステリー

   ヒステリー性精神病

 <除>詐病(意識的な模倣)

 

F44.0 解離性健忘 Dissociativeamnesia

主要な病像は通常、最近の重要な出来事の記憶喪失であり、器質的な精神障害に起因せず、通常の物忘れや疲労では説明できないほどに強い。健忘は、事故や予想外の死別などのようなトラウマ的出来事に関係し、通常は部分的かつ選択的である。健忘の範囲と完全さは日ごとに、また診察者間でしばしば異なるが、覚醒している状態では想起できない持続的な共通の核が存在する。完全で全般化した健忘は稀である。通常、遁走(F44.1)の部分症状であり、もしそうであるならば、そこに分類すべきである。

健忘に伴う感情の状態は極めて多様であるが、重症の抑うつは稀である。困惑、苦悩、様々な程度の人の注意を引く行動がはっきりと認められることもあるが、時には落ち着いた対応も目立つ。若年成人に最も高頻度に起こり、最も極端な例は通常戦闘上のストレスに晒された人に起こるものである。非器質性の解離状態は老年者ではまれである。目的のない、狭い地域の徘徊が認められることがあるが、それは通常身なりをかまわない状態を伴い、1日ないし2日以上続くことは稀である。

 

診断ガイドライ

確定診断には以下のことが必要である。

(a)トラウマ的或いはストレス性の最近の出来事(これらの点については患者以外の情報提供者がいるときにのみ明らかになることがある)に関する、部分的あるいは完全な健忘。

(b)器質性脳障害、中毒、あるいは過度の疲労が存在しないこと。

 

【鑑別診断】

器質性精神病では、通常神経系の障害を示す他の徴候があり、加えて明らかで持続的な意識障害、失見当識、動揺する意識水準などの徴候がある。考えられる何らかのトラウマ的出来事や問題とは無関係な、ごく最近の記憶の喪失は脳器質性状態により典型的である。アルコールあるいは薬物の乱用に基づく「ブラックアウト」は乱用の時期に密接に関連し、失われた記憶は消して回復しない。即時想起は正常だが、たったに2、3分後の早期ができない短期記憶障害という健忘状態(コルサコフ症候群)は解離性健忘においては認められない。

脳震盪や重症の頭部外傷に続く健忘は通常逆向性だが、重症例では前向性のこともある。解離性健忘では前向性がほとんどである。解離性健忘だけが催眠術あるいは除反応によって変化しよる。てんかんにおける発作後の健忘や、統合失調症やうつ病に時折見られる昏迷あるいは緘黙症のような他の状態は、通常は基礎にある疾患の他の特徴によって鑑別できる。

最も鑑別が困難なのは健忘の意識的な模倣(詐病)であり、病前の人格と病歴の評価を繰り返し詳細に行うことが要求される。健忘の意識的な模倣は、金銭、戦死の危険、或いは禁固刑や死刑の宣言の可能性といった明確な問題と関連している。

<除>アルコールあるいは他の精神作用物質による健忘性障害(F10-F19の第4桁が.6のもの)

  特定不能の健忘(R41.3)

  前向性健忘(R41.1)

  非アルコール性器質性健忘症候群(F04)

  てんかんの発作後健忘(G40.-)

  逆行性健忘(R41.2)

 

F44.1 解離性遁走[フーグ] Dissociativefugue

解離性遁走は、解離性健忘の全ての病像を備え、それに加えて患者は明らかに意図的に、家庭や職場から離れる旅をし、その期間中は自らの身辺管理は保たれている。症例によっては、新たな同一性を獲得することもあり、通常は2,3日のみで終わることがほとんどだが、時に長期にわたり、かつその程度が驚くほど完璧なこともある。旅は以前に知っていて情緒的に意味を持つ場所を目的地とする場合がある。遁走期間中の健忘があるにもかかわらず、その間の患者の行動は第三者からみると完全に正常に映ることもある。

 

診断ガイドライン

確定診断のためには、以下のことが存在しなければならない。

(a)解離性健忘の症状(F44.0)。

(b)通常の日常的範囲を超えた意図的な旅(旅と徘徊の区別は、その地域に詳しい人によってなされるべきである)。

(c)基本的な自己管理(食事、入浴、清拭)と、見知らぬ人との簡単な社会的関係(乗車券やガソリンを買うこと、方角を尋ねること、食事を注文すること)が保たれていること。

 

【鑑別診断】

側頭葉てんかんによくある発作後の遁走戸の鑑別は、発作後遁走がてんかんの病歴、ストレス性の出来事や問題を欠くこと、そして活動と旅があまり意図的ではなく、より断片的であることから、通常明らかである。

解離性健忘の場合と同じく、遁走の意図的模倣戸の鑑別は非常に困難なことがある。

 

F44.2 解離性昏迷

患者の行動は昏迷の診断基準を満たすが、検査や検索によって身体的原因の証拠が認められない。加えて、他の解離性障害と同様に、最近のストレス性の出来事、あるは顕著な対人関係の問題ないし社会的問題での心因の積極的な証拠がある。

昏迷は、随意運動および光や音や接触のような外的刺激に対する、正常な反応性の著しい減弱あるいは欠如によって診断される。患者は長時間、ほとんど動かないまま横たわっているか座っている。発語と自発的で意図的な運動は、完全に、あるいはほぼ完全に欠如している。ある程度の意識障害はありうるが、筋緊張、姿勢、呼吸、そして時には開眼や協同眼球運動があり、患者が眠っているのでも意識障害に陥っているでのもないことは明白である。

 

診断ガイドライン

確定診断のためには、以下のことが存在しなければならない。

(a)上述したような昏迷。

(b)昏迷を説明するような身体的障害あるいは他の精神障害がないこと。

(c)最近のストレス性の出来事ないし現在の問題の証拠。

 

【鑑別診断】

解離性昏迷は、緊張病性昏迷およびうつ病性ないし躁病性の昏迷から鑑別しなければならない。緊張病型統合失調症の昏迷では、統合失調症を示唆する症状や行動が先行することが多い。うつ病性および躁病性昏迷は通常比較的ゆっくりと発展するので、患者以外の情報提供者から病歴を聴取することで決定すべきである。うつ病性および躁病性昏迷はともに、感情障害の早期治療が普及するにつれて、多くの国でますますまれになっている。

 

F44.3 トランスおよび憑依障害

自己同一性の感覚と十分な状況認識の両者が、一時的に喪失する障害。症例によっては、あたかも他の人格、霊魂、神、あるいはあるいは「力」に取り付かれているかのように振る舞う。注意と認識は直接的な環境の1つ下2つの局面の日に制限されるか集中し、限られてはいるものの反復する運動、姿勢、発語の組み合わせがしばしば認められる。ここには、不随意か、意図しない、かつ宗教的ないし他の文化的に重用される状況を逸脱して(あるいはそれらの状況の延長として)生じ、日常の生活行動の中に侵入するトランス状態飲みを含めるべきである。

幻覚あるいは妄想を伴うと統合失調症性あるいは急性の精神病、あるいは多重人格の経過中に起こるトランス状態を個々に含めるべきではない。トランス状態が、何らかの身体的障害(側頭葉てんかんや頭部外傷のような)、あるいは精神作用物質の中毒と密接に関連数ると判断されるならば、このカテゴリーを使うべきではない。

 

F44.4-F44.7 運動および感覚の解離性障害

これらの障害では運動機能の喪失あるいは困難、あるいは(通常皮膚の)感覚の喪失が認められ、そのため患者は症状を説明できるものがないのに、身体的障害があるように訴える。症状は、患者が身体的障害に対して抱いている概念を表していることがよくあり、生理学的あるいは解剖学的原理と一致しないこともある。その上、患者の精神状態と社会的状況を調べてみると、機能喪失による能力の低下が、不快な葛藤から逃避すること、あるいは依存や憤慨を間接的に表現することに役立っていることが通常示唆される。問題あるいは葛藤が他人から見ればはっきりしていても、患者はその存在を否定することがよくあり、どのような苦悩も、症状あるいはその結果としての能力の低下のせいにする。

この子のすべての症状による能力の低下の程度は、その場にいる他の人々の数や種類の患者の感情の状態で変化することがある。すなわち順位的な統制下にない、感覚あるいは運動の喪失という中心的で不変な核心に加えて、注意を引こうとする行動が様々な程度で認められることがある。

患者によっては症状は心理的ストレスと密接に関連して発展することが多いが、別の患者では、この関連は明らかではないこともある。深刻な能力の低下を静かに受け入れること(「満ち足りた無関心」)が目立つこともあるが、一般的ではない。それは適応の良い人が明白で重篤な身体疾患に直面した時にも認められる。

病前の対人関係及びパーソナリティに異常が通常認められ、親しい親族、友人が患者の症状と類似した症状を伴う新身体疾患に罹患していたということがある。このような症状のうち程度で一過性のものは青年期、とりわけ少女に多くみられるが、しかし慢性の例は通常、若年成人に認められる。少数の患者ではこれらの障害を表出することで、ストレスへの反復する反応パターンを確立し、中年や老年においてもなおこの障害を現すことがある。

感覚の喪失の身を呈する障害はここに含める。それに加えて疼痛のような感覚及び自立神経系を介する他の複雑な感覚を含めた障害は、身体表現性障害(F45.-)に含める。

 

診断ガイドライン

神経系の身体的障害が存在したり、あるいは以前はよく適応し、正常な家族的、社会的な関係を持っていた人の場合は、十分注意してこの診断を下さねばならない。

確定診断のためには、

(a)身体的障害の証拠があってはならない。

(b)障害の出現の理由を説得力を持って系統的に記述できるように、患者の心理的、社会的背景、対人関係が十分に明らかにされていなければならない。

 

もし現にある身体障害あるいは潜在的新身体障害の関与が少しでも疑われる、あるいは障害の発症した理由が不明ならば、診断は疑いないし暫定的としておかねばならない。疑問が残るかあるいは明確でない症例の場合、重篤な身体的ないし精神科的障害が後で現れる可能性に常に留意すべきである。

 

【鑑別診断】

進行性の神経疾患の早期、とりわけ多発性硬化症や全身性エリテマトーデスが運動と感覚の解離性障害と混同されることがある。特に鑑別が難しいのは、早期の多発性硬化症に対して苦悩と人の注意をひこうとする行動で反応する患者である。診断が明らかになるまで、比較的長期にわたる評価と観察が必要なこともある。

多彩で漠然とした身体的愁訴は、他の新身体表現性障害(F45.-)あるいは神経衰弱(F48.0)に分類すべきである。

個別的な解離症状が統合失調症や重症うつ病のように重大な精神障害に起こることもあるが、これらの障害は通常明白であり、診断とコード化のためには解離性障害よりも優先すべきである。

運動と感覚の喪失の意図的な模倣と解離を区別することは、しばしば非常に困難である。決定は、詳細な観察と、患者の人格、障害の発症をめぐる事情、そして能力低下が持続した場合と比較して回復した場合の結果を理解することによって行われよう。

 

F44.4 解離性運動障害

解離性運動障害の最も一般的なものは、一つあるいはいくつかの四肢の全てあるいは一部を動かす能力の喪失である。麻痺は部分的で、弱く緩徐な運動を伴うこともあるし、完全なこともある。協調運動障害(失調)の様々な型や程度が、とりわけ下肢で明瞭になることがあり、その結果、奇妙な歩行を生じたり、あるいは介助なしには立つことができなくなる(失立ー失歩)。四肢の一つ又はそれ以上や全身に、誇張された振戦や動揺が認められることもある。ほとんどどのような種類の運動失調、失行、無動、失声、構音障害、運動障害、けいれん、麻痺とも極めて類似しうる。

<含>心因性失声

   心因性発生障害

 

F44.5 解離性けいれん

解離性けいれん(偽発作)は、運動という点ではてんかん発作の極めて精密の模倣でありうるが、咬舌、転倒による打撲傷、尿失禁は稀であり、意識喪失はないか、あるいは昏迷かトランスの状態で置き換えられている。

 

F44.6 解離性知覚麻痺及び感覚脱失

皮膚の感覚脱失領域の境界がしばしば医学的知識よりも、患者の身体的機能に関連する観念と関連していることが明らかである。神経学的損傷によることがあり得ないような感覚用指揮官識別の消失が認められることもある。感覚脱失は知覚異常の訴えを伴うことがある。

解離性障害においては視覚の完全な喪失は稀である。視覚障害は鋭敏さの消失か視野全体のぼやけ、あるいは「筒状視野」であることがより多い。視覚喪失の訴えもかかわらず、患者の全般的な可動性と運動遂行はしばしば驚くほどに保たれている。

解離性聾と嗅覚脱失は、感覚あるいは資格の喪失に比べてほとんどみられないものである。

<含>心因性聴覚喪失

 

F44.7 混合性解離性(転換性)障害

上記に特定した障害(F44.0ーF44.6)が混合する場合は、ここにコードするべきである。

 

F44.8 他の解離性(転換性)障害

 

F44.80 ガンザー症候群

「的外れ応答」によって特徴づけられ、通常いくつかの他の解離症状を伴い、しばしば心因の存在を示唆する環境において認められる。Ganserによって記述された複合した障害はここにコードすべきである。

 

F44.81 多重人格障害

この障害は稀であり、どの程度医原性であるか、あるいは文化特異的であるかについて議論が分かれる。主な病像は、二つ以上の別個の人格が同一個人にはっきりと存在し、そのうち一つだけがある時点で明らかであるというものである。各々は独立した記憶、行動、好みをもった完全な人格である。それらは病前の単一の人格と著しく対照的なこともある。

二重人格の一般的な形では、一方の人格が通常優位であるが、一方が他方の記憶の中に入ることはなく、またほとんど常に互いの人格の存在に気づくこともない。一つの人格から他の人格への変化は最初の場合は通常突然に起こり、寅真的な出来事と密接な関連を持っている。その後の変化は劇的な或いはストレス性の出来事にしばしば限られて起きるか、あるいはリラクゼーション、催眠、あるいは除反応をもたらす治療者との面接中に起きる。

 

F44.82 小児期あるいは青年期にみられる一過性解離性(転換性)障害

 

F44.88 他の特定の解離性(転換性)障害

 

<含>心因性錯乱

   心因性もうろう状態

 

F44.9 解離性(転換性)障害、特定不能のもの

 

F45 身体表現性障害

身体表現性障害の主な病像は、診察や検査所見は繰り返し陰性で症状には身体的基盤はないという意思の保証にもかかわらず、さらなる医学的検索を執拗に要求するとともに繰り返し身体症状を訴えるものである。もし何らかの身体的な障害があるにしても、それらは症状の性質や程度あるいは患者の症状や囚われを説明するものではない。症状の発現と持続が深いな生活上の出来事あるいは困難や葛藤と密接な関係を持つ時でさえ、通常、患者は心理的原因の可能性について話し合おうとすることに抵抗する。この点は抑うつ症状および不安症状は存在する例においてさえ同様のことがある。身体的である心理的であれ、症状の原因について達しうる理解の程度は、司馬師は患者と医師の双方にとって期待外れで不満足なものである。

これらの障害において、ある程度の注意をひこうとする(演技的な)行動がしばしば認められ)。特に、病気が本質的に身体的なものであり、さらに検索や検査を必要であることを、石に説得できずに憤慨する患者に認められる。

 

【鑑別診断】

心気妄想との鑑別は通常、患者をよく知ることによってできる。信念が長く続き、根拠はないように見えても、話し合い、保証、別の検査や検索の実施によって、確信の強さは通常短期間、ある程度は影響を受ける。その上、不快で脅かされる身体感覚の存在は、身体疾患に違いないという確信が生じ持続する。文化的に受け入れられる理由付けとみなすことができる。

 

<除>解離性障害

抜毛

舌足らず

舌あもつれ

爪噛み

他に分類される障害あるいは疾患と関連した心理的あるいは行動的要因

性機能不全、器質性の障害あるいは疾患によらないもの

指しゃぶり

チック障害

トゥレット症候群

抜毛症

 

F45.0 身体化障害

主要な病像は多発性で繰り返し起こり、しばしば変化する身体症状であり、通常患者が精神科医を受診するまでに数年間かかる。ほとんどの患者には一次医療と専門医療の両者を受診した長く複雑な病歴があり、その間に多くの検査が行われて所見が陰性であったり、多くの手術は行われて無効であったりすることがある。症状は体のどのような部位や基幹系統にも起こるが、消化管系の感覚(痛み、おくび、嘔吐、悪心など)及び異常な皮膚感覚(掻痒感、灼熱感、うづき、しびれ、痛みなど)、できものが最もよく見られる。性に関する訴え及び月経に関する訴えもよくある。

顕著な抑うつと不安がしばしば存在し、特別な治療を要する場合がある。

この障害の経過は慢性的で動揺性であり、しばしば社会的、対人関係的、及び家族的な行動の長期間にわたる崩壊に結びつく。障害は男性よりも女性にはるかに多く、通常は成人早期に始まる。

頻繁な薬物治療の結果、しばしば薬物(通常、鎮静薬と鎮痛薬)への耐性と乱用をが生じる。

 

診断ガイドライン

確定診断には、以下のものすべてが必要である。

(a)適切な身体的説明が見出せない、多発性で変化しやすい身体症状が少なくとも2年間存在する。

(b)症状を身体的に説明できる原因はないという、数人の医師の忠告あるいは保証を受け入れることを拒否し続ける。

(c)症状の性質とその結果としての行動に由来する、社会的および家族間機能のある程度の障害。

<含>多訴性症候群

   多発性心身性障害

 

【鑑別診断】

診断においては、以下の障害との鑑別が重要である。

a.身体疾患:身体化障害が長く続く患者では、その人と同年齢の人と同じ割合でそれとは別の身体疾患が発症する可能性がある。もしそのような身体疾患を示唆するような、身体的愁訴の焦点や恒常性の変化があるならば、追加の検索や診察を考慮しなければならない。

b.感情(うつ病性)および不安障害:一般に様々な程度の抑うつや不安は身体化障害に随伴するが、診断が妥当であるほどに症状が十分顕著でも持続的でもなければ、別個に特定する必要はない。四十歳以降の多発性の身体症状の発症は、原発性うつ病性障害の早期徴候であることがある。

c.心気障害:身体化障害では、症状それ自体とそれらの個々の影響が強調されるが、心気障害においては、注意はより多く根底にある進行性で深刻な疾患過程の存在と、それが結果としてもたらず障害に向けられる。

心気障害では患者は基底にある疾患の性質を決定あるいは確証するための検索を求める傾向があるのに対し、身体化障害では通常長期間にわたる非服薬と並んで過剰な服薬も認められの対し、心気障害の患者は薬物とその副作用を恐れ、異なる医師を頻繁に受診することで安心を得ようとする。

d.妄想性障害(身体に関する妄想を伴う統合失調症および心気妄想を伴ううつ病性障害など):より一定した性質のより数少ない身体症状を持った奇異な性質の信念が、妄想性障害の最も典型的なものである。

短期間の(例えば2年未満)それほど目立たない表情パターンは鑑別不能型身体表現性障害(F45.1)に分類する方が良い。

<含>ブリッケ(Briquet)障害

 

F45.1 鑑別不能型〔分類困難な〕身体表現性障害

身体的愁訴が多発性で変化し持続的であるが、身体化障害の完全で典型的な臨床像を乱さないときに、このカテゴリを考慮すべきである。例えば、強烈で劇的な訴え方を欠き、訴えが比較的少なく、あるいは社会や家族の一員としての機能に全く支障がないということがある。心理的原因を決定する根拠がある場合もない場合もあるが、精神科的診断の根拠となる症状には身体的基盤があってはならない。

もし身体的障害が一番にある明らかな可能性が依然として存在するか、あるいはもし診断的なコード化の時点で精神科的評価が完全ないならば、ICD-10の適切な章の中の他のカテゴリーを使用すべきである。

<含>鑑別不能な心身性障害

 

【鑑別診断】

身体化障害(F45.0)の全症候群にとってのものと同様。

 

F45.2 心気障害

本質的な病像は、一つ以上の重篤で進行性の身体疾患に罹患している可能性への頑固な囚われである。患者は執拗に身体的愁訴、あるいは彼らの身体的に外見への捕らわれを示す。正常か普通の感覚や外見が患者にとっては異常で、苦悩を与えるものと解釈されることがしばしばであり、通常身体の一つか二つの器官あるいは器官系統にのみ注意が集中する。恐れている身体疾患や醜形を患者が名指すこともあるが、その場合でもその存在の確信の 程度とその疾患を この疾患以上に強調する程度は、通常診察ごとに変化する。患者は以前から目立っていた疾患に加えて、他のあるいは付加的な身体疾患を存在するかもしれないと言う可能性を、通常喜んで受け入れようとする。

抑うつと不安がしばしば存在し、そのため付加的な診断が必要なことがある。50歳以降に初めてこの疾患が現れることは稀で、症状との両者の経過は通常慢性かつ動揺性である。 体の機能と形態に関する固定化した妄想があってはならない。1つ以上の疾患の存在への恐怖(疾病恐怖)はここに分類すべきである。

この症候群は男性と女性のどちらにも生じ、特別な家族的特徴はない(身体化障害とは対照的である)。 

多くの患者、特にこの疾患が軽症の患者ほどプライマリケアあるいは精神科以外の専門医療に止まっている。精神科への紹介は、障害が発展する早い時期になされ、かつ内科医と精神科医の手際の良い協調がなければ、しばしば患者を憤慨させるものとなる。随伴する能力低下の程度は非常に様々である。ある患者は症状の結果として家族内や社会的な人間関係を支配したり操作したりするが、 少数の患者はそれと対照的にほとんど正常な社会的機能を果たしている。

 

診断ガイドライン

確定診断のためには、以下の二つのものがなければならない。

(a)繰り返される検索や検査により、なんら適切な身体的説明ができないにもかかわらず、現在の症状の基底に少なくても一つの重篤な身体的疾病が存在するという頑固な信念、あるいは奇形や醜形あるだろうという頑固な囚われ。

(b)症状の基底に身体疾患や異常が存在しないという、2人の異なる医師の忠告や保証を受け入れことへの頑固な拒否。

<含>身体醜形障害

   醜形恐怖

   心気神経症

   心気症

   疾病恐怖

 

【鑑別診断】

以下の障害からの鑑別が重要である。

a身体化障害:身体化障害におけるような個々の症状についてよりも、むしろ障害それ自体の存在、及びその将来の転帰に焦点がある。 また、身体化障害ではより多くの、しばしば変化する身体的障害の可能性を心配するのに対し、新規障害では一貫してあげられる一つか二つの身体的疾患のみにとらわれていることが多い。新規障害においては明らかな性別も、家族に関連した事柄もない。

bうつ病性障害:もし抑うつ症状がとりわけ顕著であり、新規的考えの発展に先行するならは、うつ病性障害が一次性であろう。

c妄想性障害:新規障害における確信は、身体的妄想を伴ううつ病性障害及び統合失調症性障害における確信ほどに固定的なものではない。患者が不快な外見あるいは奇形的身体であると確信しているような障害は妄想性障害(F22.-)に分類すべきである。

d不安およびパニック障害:不安の身体症状は時に重篤な身体的疾病の徴候として解釈されるが、これらの障害においては、患者は通常生理学的な説明によって安心し、身体的疾病の存在を確信するには至らない。

 

F45.3 身体表現性自律神経機能不全

 

患者の示す症状は、あたかもそれらが大部分あるいは完全に自律神経の支配とコントロール下にある系統や器官、すなわち心血管系、消化器系、呼吸器系の身体疾患によるかのようである(生殖器泌尿器系のある面もまたここに含まれる)。最も一般的で目立つ例は心血管系(「心臓神経症」)、呼吸器系(心因性過呼吸と吃逆)、消化器系(「胃神経症」と「神経性下痢」)が障害される。症状には通常2つの型があり、そのどちらも関与する器官あるいは系統の身体疾患を示すものではない。第一の型は、この診断の大部分がこれによるが、動悸、発汗、紅潮、振戦のような他覚的な自律神経亢進徴候に基づく愁訴によって特徴づけられる。第二の型は、一過性の鈍痛や疼痛、灼熱感、重たい感じ、しめつけられる感じや、膨れ上がっている、あるいは拡張しているという感覚などの、より特異体質的な、主観的で非特異的な症状によって特異づけられる。これらの症状は患者によって特定の器官ないし系統に関連付けられる(自律神経症状もまたそうであるように)。特徴的な臨床像を形成するのは、明らかな自律神経の関与、付加的で非特異的な主観的愁訴、そして特殊な器官あるいは系統が疾患の原因として執拗に言及されることである。

この疾患と関連するようにみえる心理的ストレス、或いは現在の困難や問題も、多くの患者で認められるだろう。しかしながら、この状態の診断基準を明らかに満たしているにもかかわらず、そうでない患者も実際には多い。

これらの疾患では、吃逆、鼓腸、過呼吸のような生理学的機能のわずかな障害が存在することもあるが、それ自体では当該の器官や系統の本質的な生理学的機能を乱すことは無い。

 

診断ガイドライン

確定診断のためには、以下のすべてが必要である。

(a)動悸、発汗、紅潮のような持続的で苦痛を伴う自律神経亢進症状。

(b)特定の器官あるいは系統に関連付けられる付加的な主観的症状。

(c)訴えのある器官あるいは系統の重篤な(しかししばしば特定不能の)障害の可能性に関するとらわれと苦悩で、医師が説明と保証を繰り返しても反応がないもの。

(d)訴えのある系統あるいは器官の構造或いは機能に明らかな障害の証拠がないこと。

 

鑑別診断

全般性不安障害との鑑別は、全般性不安障害では自律神経亢進は、恐怖や不安な予感のような心理的構成要素が優勢であること、そしてその他の症状については固定した身体的焦点がないことによって可能である。身体化障害では自律神経症状は生じるが、それらは他の多くの感覚や感情と比べて優勢でも持続的でもなく、それほど持続的に1つの器官や系統に所属する症状でもない。

 

<除>

他に分類される障害あるいは疾患と関連した心理的あるいは行動的要因

 

第5桁の数字は、このグループの個々の障害を分類する為に使用することができ、患者が症状の起源とみなす器官あるいは系統を示す。

F45.30 心臓および心血管系

 <含>心臓神経症

    ダ・コスタ症候群(Da Costa’s syndrome)

    神経循環性無力症

 

F45.31 上部消化管

 <含>胃神経症

    心因性空気嚥下症、吃逆、消化不良、胃痙攣

 

F45.32 下部消化管

 <含>心因性鼓腸、過敏性腸症候群、下痢、ガス症候群

 

F45.33 呼吸器系

 <含>心因性の咳嗽、過呼吸

 

F45.34 泌尿生殖器系

 <含>心因性尿意頻回、排尿困難

 

F45.38 ほかの器官あるいは系

 

F45.4 持続性身体表限性疼痛障害

主な愁訴は、頑固で激しく苦しい痛みであり、それは生理的過程や身体的障害によっては完全には説明できない。痛みは、主要な原因として影響を及ぼしていると十分に結論できる情緒的葛藤や心理的社会的問題に関連して生じる。結果的には、個人的であれ、医療的なものであれ、援助を受けたり注意を引いたりすることが著明に増える。

うつ病性障害や統合失調症の経過中に生じる心因性起源と推定できる痛みを個々に含めてはならない。筋緊張性頭痛や片頭痛などの精神‐生理学的メカニズムが知られているか推論できるものに起因するが、しかしなお心因性の原因も関与していると考えられる痛みは、F54「他に分類される障害あるいは疾患に関連した心理的あるいは行動的要因」にICD-10の他のコード(たとえば片頭痛 G43.-)を加えてコードすべきである。

 

<含>精神痛(Psychalgia)

   心因性背部痛あるいは頭痛

   身体表現性疼痛障害

 

鑑別診断

最もよく出会う問題はこの障害を、帰室的に引き起こした痛みの演技的な修飾から鑑別することである。器質的な痛みはあるが、まだ明確な身体的診断に至っていない患者は、おそれたり憤慨したりしやすく、結果として注意を引こうとする行動をとることがある。様々な疼痛は身体化障害では普通であるが、他の愁訴より持続的ではないか、あるいは優勢ではない。

<除>特定不能の背部痛(M54.9)

   特定不能の(急性/慢性)疼痛(R52.-)

   緊張性頭痛(G44.2)

 

F45.8 他の身体表現性障害

この障害で訴えられる愁訴は自律神経系を介さず、特定の系統や身体部位に限られている。このことは、身体化障害(F45.0)と鑑別不能型身体表現性障害(F45.1)にみられる、症状や苦悩の原因についての多様でしばしば変化する愁訴とは対照的である。組織の損傷は認められない。

身体的障害に起因せず、ストレスの多い出来事や問題と時期的に密接に関連し、或いは結果的に個人的であれ医療的であれ、患者への注意が著しく増大するいかなる感覚障害も古今分類すべきである。腫脹した感覚、皮膚を何かが動く感覚、異常知覚(うずきおよび/またはしびれ)が一般的な例である。以下のような障害もここに含める。

(a)「ヒステリー球」(嚥下障害を引き起こす咽頭部にかたまりがある感じ)、および嚥下障害の他の型。

(b)心因性斜頸、および他の痙性の運動障害(しかしトゥレット症候群をのぞく)。

(c)心因性掻痒症(しかし心因性の起源をもつ脱毛症、皮膚炎、湿疹あるいは蕁麻疹のような特異的な皮膚の病変(F54)をのぞく)。

(d)心因性月経困難(しかし性交疼痛症(F52.6)を冷感症(F52.0)をのぞく)。

(e)歯ぎしり。

 

F45.9 身体表現性障害、特定不能のもの

<含>特定不能の精神生理学的障害あるいは心身性障害

 

F48 他の神経症性障害

 

F48.0 神経衰弱

この障害の発現は顕著な文化的な差異が存在し、かなり重複する2つの主要な病型が存在する。1つの病型では、主要な病像は精神的な努力の後に疲労が増強するという訴えであり、しばしば職業の遂行あるいは日常的な仕事を処理する能率の低下と結びついている。精神的な易疲労性は、典型的には注意を三万二させる連想或いは回想の不快な侵入、注意集中困難や全般的に非能率的な施行として述べられる。もう一方の病型では、努力のあとの身体的あるいは肉体的な衰弱や消耗が強調され、筋肉の鈍痛と疼痛とくつろげない感じを伴う。両型において、めまい、筋緊張性頭痛、全身の不安定感のような様々な他の不快な身体感覚が頻繁にみられる。精神的及び身体的な健康状態の悪化に関する心配、易刺激性、アンヘドニア、そして多様で軽度の抑うつと不安の共存などはすべて一般的である。睡眠はその初期と中間期においてはしばしば障害されるが、睡眠過剰が目立つこともある。

 

診断ガイドライン

確定診断のためには、以下の事が必要である。

(a)以下の2つのうちどちらか。」

 1)精神的努力のあとの疲労の増強についての持続的で苦痛な訴え。

 2)あるいは、わずかな努力のあとの身体的な衰弱や消耗についての持続的な苦痛の訴え。

(b)以下のうち少なくとも2つを満たすこと。

1)筋肉の鈍痛と疼痛

2)めまい

3)筋緊張性頭痛

4)睡眠障害

5)くつろげない感じ

6)いらいら感

7)消化不良

(c)いかなる自律神経症状や抑うつ症状があっても、本書の中のより特異的な障害のいずれかの診断基準を満たすほど十分に持続的で重症でないこと。

<含>消耗症候群

 

鑑別診断

多くの国において神経衰弱は、診断カテゴリーとして一般的には用いてはならない。そして過去においてそのように診断された症例の多くは、現在ならばうつ病性障害か不安障害の診断基準を満たすことだろう。しかしながら、他のどの神経症性候群の記述よりも、神経衰弱の記述によりよく適合する症例は存在し、このような症例は特定の文化圏において他の文化圏寄りも多く存在するように思われる。神経衰弱という診断カテゴリーを使用するならば、まず最初にうつ病あるいは不安障害を除外しなけばならない。この症候群の目立つ特質は患者が易疲労性と衰弱について強調し、低下した精神摘

 

DSM-Ⅳ

 

7 不安障害 AnxietyDsiorders

 

パニック発作及び広場恐怖は、この章のいくつかの障害と関連して起こることから、パニック発作及び広場恐怖の診断基準を始めに独立して取り上げてある。

しかし、それらは独自の診断コードを持っておらず、独立した単位として診断することはできない。

 

パニック発作 PanicAttack

注:パニック発作は、コード番号のつく障害ではない。パニック発作が起こる特定の診断にコードをつけること。

強い恐怖または不快を感じるはっきり他と区別できる期間で、その時、以下の症状のうち4つ(またはそれ以上)が突然に発現し、10分以内にその頂点に達する。

 

(1)動悸、心悸亢進、または心拍数の増加

(2)発汗

(3)身震いまたは震え

(4)息切れ感または息苦しさ

(5)窒息感

(6)胸痛または胸部不快感

(7)嘔気または腹部の不快感

(8)めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ

(9)現実感消失(現実でない感じ)、または離人症状(自分が自分でない感じ)

(10)コントロールを失うのではないか、または気が狂うのではないかという恐怖

(11)死ぬのではないかという恐怖

(12)異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)

(13)冷感または熱感

 

広場恐怖 Agoraphobia

注:広場恐怖は、コード番号のつく障害ではない。広場恐怖が起こる特定の診断にコードをつけること。

A.逃げるに逃げられない(または逃げたら恥をかく)ような場所や状況、またはパニック発作やパニック様症状が予期しないで、または状況に誘発されて起きた時に、助けが得られない場所や状況にいることについての不安。広場恐怖が生じやすい典型的な状況には、家の外に一人でいること、混雑の中にいること、または列に並んでいること、橋の上にいること、バス、汽車、または自動車で移動していることなどがある。

B.その状況が回避されている(例:旅行が制限されている)か、またはそうしなくても、パニック発作またはパニック様症状が起こることを非常に強い苦痛または不安を伴いながら耐え忍んでいるか、または同伴者を伴う必要がある。

C.その不安または恐怖症性の回避は、以下のような他の精神疾患ではうまく説明されない。たとえば、社会恐怖(例:恥ずかしい思いをすることに対する恐怖のために社会的状況のみを避ける)、特定の恐怖症(例:エレベーターのような単一の状況だけを避ける)、強迫性障害(例:汚染に対する強迫観念のある人が、ごみや汚物を避ける)、外傷後ストレス障害(例:強いストレス刺激と関連した刺激を避ける)、または分離不安障害(例:家を離れること、または家族から離れることを避ける)。

 

300.01 広場恐怖を伴わないパニック障害 PanicDisorderWithoutAgoraphobia

A.(1)と(2)の両方を満たす。

(1)予期しないパニック発作が繰り返し起こる。

(2)少なくとも1回の発作後の後1か月間(またはそれ以上)、以下のうち1つ(またはそれ以上)が続いていたこと:

 (a)もっと発作が起こるのではないかという心配の継続

 (b)発作またはその結果がもつ意味(例;コントロールを失う、心臓発作を起こす、”気が狂う”)についての心配

 (c)発作と関連した行動の大きな変化

B.広場恐怖が存在しない

C.パニック発作は、物質(例;乱用薬物、投薬)または一般身体疾患(例;甲状腺機能亢進症)の直接的な生理学的作用のものではない。

D.パニック発作は、以下のような他の精神疾患では上手く説明されない。例えば、

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