過食性障害について(各論) 前編

前回等に引き続き、摂食障害に関するコラムです。

 

今回は、過食性障害の詳細をみていきます。

 

DSM-5による記述に解説を加える形で進めていきます。

 

DSM‐5に関する説明は、以下のコラムをご参照ください。

 

 

診断基準:ICD「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)」とDSM「精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」
(2019.07.27作成、09.16更新) どの精神疾患・障害の説明にも、必ず登場する診断基準が2つあります。 ICDとDSMです。 これは世界中で使用されている、代表的なものです。 今後、...

 

 

 

 

診断基準

 

A.反復する過食エピソード。過食エピソードは以下の両方によって特徴づけられる。

(1)他とはっきり区別される時間帯に(例:任意の2時間の間に)、ほとんどの人が同様の状況で同様の時間内に食べる量よりも明らかに多い食物を食べる。

(2)そのエピソードの間は、食べることを抑制できないという感覚(例:食べるのを止めることができない。または、食べるものの種類や量を抑制できないという感覚)

 

B.過食エピソードは、以下のうち三つ(またはそれ以上)のことと関連している。

(1)通常よりずっと早く食べる

(2)苦しいくらい満腹になるまで食べる

(3)身体的に空腹を感じていない時に大量の食物を食べる

(4)自分がどんなに多く食べているかを恥ずかしく感じるため一人で食べる

(5)後になって、自己嫌悪、抑うつ気分、または強い罪悪感を感じる

 

C.過食に関して明らかな苦痛が存在する

 

D.その過食は、平均して3カ月間にわたって少なくても週一回は生じている

 

E.その過食は、神経性過食症の場合のように反復する適切な代償行動とは関係せず、神経性過食症または神経性やせ症の経過の期間のみに起こるものではない

 

 

該当すれば特定せよ

部分寛解:かつて過食性障害の診断基準を全て満たしていたが、現在は一定期間過食エピソードが平均して週1回未満の頻度で生じている

完全寛解:かつて過食性障害の診断基準を全て満たしていたが、現在は一定期間診断基準のいずれも満たしていない

 

現在の重症度を特定せよ

重症度の最も低いものは、過食エピソードの頻度に基づいている(以下を参照)。

他の症状や昨日の能力低下の程度を反映して、重症度が上がることがある。

 

軽度:過食エピソードが週に1~3回

中等度:過食エピソードが週に4~7回

重度:過食エピソードが週に8~13回

最重度:過食エピソードが週に14回以上

 

 

診断的特徴

 

過食性障害の本質的特徴は、過食エピソードを繰り返すことであり、それは平均して、3ヶ月の間に少なくとも週一回は起こらねばならない(基準D)。

[解説]過食性障害では、過食行動の頻度が、週1回以上で3か月間以上続きます。

 

 

「過食エピソード」は、他とはっきり区別される時間帯に、大抵の人が同様の状況で同様の時間に食べる量よりも明らかに多い食物を食べることと定義される(基準A1)。

[解説]一般的な感覚より明らかに多い量を一定時間以内(2時間以内)に食べる行動を過食エピソードと言います。「明らかに」というのがあいまいに聞こえるところはあるでしょうが、実際にこの障害に悩まれている方の場合は極端に摂取量が多いことが多く、判断に迷うケースは少ないと思われます。

 

 

食べる状況は、摂取量が多すぎるかどうかについての臨床家の判断に影響を与えるかもしれない。たとえば、通常の食事では多すぎるとみなされるかもしれないような食物の量でも、祝賀会または休日の食事なら普通とみなされるかもしれない。

[解説]摂取量がその状況によって変化し得ります。特定の状況下でのみの情報で診断することはないと思われます。

 

 

「他とはっきり区別される時間帯」は、普通2時間以内の限定された時間帯を指す。

[解説]多くの方が一気に大量に食べるため、通常は2時間以内に完結します。

 

 

単一の過食エピソードは一つの場面に限定する必要はない。例えば、レストランで過食がはじまり帰宅中も食べ続けることがある。

[解説]連続する過食行動ならば、シーンが変わってもよいとされています。

 

 

1日中少量の食物を少しずつ食べ続けることは、過食とはみなされないだろう。

[解説]一方、時折、少量を長時間に渡って食べ続けることを報告する方もいますが、少なくとも定義上は過食ではありません。

 

 

過度の食物消費が起こることには、それを過食エピソードとみなすために、抑制不能という感覚(基準A2)を伴わなければならない。抑制不能の指標は、食べないでいたり、一旦始まれば食べるのを止めたりすることができないことである。

[解説]抑制できる大量の摂取は、摂食障害の行動ではありません。別の見方をすれば、摂食障害という病に支配されているというには、その根拠が必要ですが、それはその方のコントロールが効かない、つまり抑制が効かないことが必要になるということです。

 

 

過食エピソードの間または過食エピソードの後に解離性の内容について報告する人もいる。

[解説]解離の詳細な説明はいずれ「解離性障害」のコラムを記載する際に行いたいと思いますが、簡単に言うと意識や感覚などが切断されて、自分が自分でないような感じになることを言います。多くの場合、その最中の記憶が失われます。過食を正常心理で行えることは少なく、その間、意識が変性していることは十分考えられます。

 

 

過食に関連した抑制不能は絶対的なものではない。例えば、電話が鳴っている間は過食を続けていたとしても、同室者又は配偶者が予期せず部屋に入ってきた時は過食をやめるかもしれない。自分の過食エピソードは急に生じる抑制不能の感覚によって特徴付けられるのではなく、むしろ抑制できない摂食のより全般化した様式によって特徴付けられると報告する人もいる。食事を抑制する努力を放棄してしまったと報告するならば、抑制不能が存在するとみなすべきである。

[解説]抑制不能の定義も難しいところがありますが、単純には摂食が自分のコントロール外に置かれているならば、そう言って間違いではないでしょう。

 

 

場合によっては過食が計画されることもありうる。

[解説]突然起こることも多いですが、例えば仕事から帰宅する際中から過食するための食べ物を買い込み、帰宅後に「計画して」過食する方も多いです。

 

 

過食の間に消費される食物の種類は人によっても異なるし、同じ人でもその時々で異なる。

[解説]食物の種類はまちまちですが、経験的には炭水化物が多いと思われます。また、本稿の過食性障害では嘔吐はみられませんが、過食症で嘔吐を伴う場合は嘔吐しやすいものが多いです。

 

 

過食は一見、特定の栄養物を欲するということよりも、消費される食物の量の異常さによって特徴づけられるように思われる。

[解説]種類よりも量というのは、まさしくその通りです。

 

 

過食は明らかな苦痛(基準C)は、少なくとも以下の特徴のうち三つによって特徴づけられなければならない。すなわち、通常よりずっと早く食べる;苦しいくらい満腹になるまで食べる;身体的に空腹を感じていない時に大量の食物を食べる;自分がどんなに多く食べているか恥ずかしく感じるために一人で食べる;後になって自己嫌悪、抑うつ気分、または強い罪責感を感じる(基準B)。

[解説]「楽しく」過食しているなら、それは過食ではなく、つまり摂食障害ではありません(正常心理ということです)。落ち着いて味を楽しむわけでもないし、適度な量でとどめることもありません(できません)、空腹でもないのに大量に食べてしまいます、そんな姿を他人にみられて平気な方もそうそういませんし、何より後にそういう自分を責めています。

 

 

過食性障害の人は概して自分の食事の問題を恥ずかしく思い、症状を隠そうとする。過食は通常密かに、または出来るだけ目立たないように行われる。

[解説]多くの方が、過食を恥ずかしいものであると認識しており、見られないようにしています。

 

 

過食の前に最もよく見られるのは不快な感情である。その他のきっかけとしては、対人的ストレス因、食事制限、体重および体系及び食物に関する嫌な気分、退屈などがある。過食は短期間でこれらのエピソードを始めさせた要因を小さくしたり弱めたりするかもしれないが、否定的な自己評価と深い気分がしばしば遅れて生じてくる。

[解説]何かしらのトリガーがあって過食が起こることはしばしばみられます。過食をすることで一時的に気持ちはすっきりしますが、その後に上述もしている自責的な気持ちや罪悪感、抑うつ気分(落ち込み)に襲われます。

 

 

 

診断を指示する関連特徴

 

過食性障害は、正常体重/過体重および肥満の人に生じる。この障害は、受診する人においては過体重および肥満と関連しているのは確かである。それにもかかわらず、過食性障害は肥満とは性質が異なる。ほとんどの肥満者は反復性の過食を行うことはない。さらに、過食性障害がなく体重が同じ肥満者と比べて、この障害のある人は、食行動の研究においてより多くのカロリーを消費し、より大きな機能の障害があり、生活の質がより低く、主観的な苦痛がより大きく、より重症の精神科併存症がある。

[解説]過食性障害と肥満の相違点ですが、まず(特に繰り返す)過食を肥満の方が行うことはありません。上述の過食の定義を満たし、抑制不能な感覚に襲われる食行動を肥満の方はとりません。また過食性障害に悩む方はその背後に苦痛があるため、気分の落ち込みがあり、それによる日常生活、社会生活への影響が出ます。

 

 

 

有病率

 

米国の成人(18歳以上)における過食性障害に12か月有病率は、女性がが1.6%、男性が0.8%である。過食性障害の男女比は神経性過食症よりもずっと偏りが少ない。過食性障害は人種的民族的少数集団においても、白人女性について報告されてきたものと同じくらいの頻度である。この障害は、一般人口よりも減量治療を求めている人に多くみられる。

[解説]神経性過食症では、男女比が1:10であったことを考えると、かなりの違いです。また人種間での差もそれほどないのも特徴です。

 

 

 

症状の発展と経過

 

過食性障害の発症についてはあまり知られていない。過食と、客観的に過度の消費のない抑制を失った摂食の両方ともが子供に生じ、体脂肪増加、体重増加、心理学的症状の増加と関連している。過食は青年や大学生の年齢の集団でよくみられる。抑制を失った摂食や間欠的な過食は、一部の人にとっては摂食障害の前駆的な時期を示しているかもしれない。

[解説]過食性障害は、まだ解明されていない部分が多い障害です。また抑制が効かなくなってきている食行動がある場合は、それが摂食障害に発展しやすい可能性はあるでしょう。

 

 

過食性障害をもつ多くの人では、過食の発症に続いてダイエットが行われる(このことは、機能不全となるようなダイエットが通常は過食の発症に先行する神経性大食症と対照的である)。

[解説]これは、神経性大食症との相違点として知られています。最初に過食をして、それによる肥満を防ごうとダイエットを始めるケースが多いです。

 

 

過食性障害は典型的には青年期および成人早期に始まるが、成人後期に始まることもある。受診する過食性障害の人は、受診する神経性過食症および神経性やせ症の人よりも通常は年上である。

[解説]神経性過食症や神経性やせ症の方は中高生が多いですが、過食性障害はややそれより年齢が上がります。20歳代から起こることもあります。

 

 

自然経過と治療転帰による研究の両方での寛解率は、神経性過食症または神経性やせ症よりも過食性障害の方が高い。

[解説]これもまだ正確な理由は不明ですが、寛解(症状がなくなり持続すること)は過食性障害の方が高いとされています。

 

 

過食性障害は比較的持続するように思われ、その経過は、重症度についても持続期間についても神経性過食症と同様である。

[解説]罹病期間が長いのは、摂食障害全般に言えることです。

 

 

過食性障害から他の摂食障害への移行は珍しい。

[解説]過食性障害は、他のタイプに移行することはあまりありません。

 

 

 

危険要因と予後要因

 

遺伝要因と生理学的要因:過食性障害は家族性に生じるようであり、このことは相加的遺伝的効果を反映している。

[解説]まだ研究段階ですが、家族性があることは認められています。

 

 

 

文化に関する診断的事項

 

過食性障害は、米国、カナダ、多くの欧州の国々、オーストラリア、ニュージーランドなどの最も工業化された国において、ほぼ同様の頻度で生じる。米国では、過食性障害の有病率は、非ラテン系白人、ラテン系、アジア系、アフリカ系の間で同様のようである。

[解説]いわゆる欧米の先進国では頻度は変わらず、人種間での差もそれほどないようです。

 

 

 

過食性障害の機能的結果

 

過食性障害はある範囲での機能的結果と関連しており、社会的役割への適応問題、健康に関連した生活の質及び生活満足度の不足、医学的疾患の罹患率および死亡率の高さ、体格指数(BMI)が同じ対照群と比べたときの医療利用の増加などと関連している。過食性障害は、体重増加および肥満の進行に対する危険の高さとも関連している。

[解説]過食性障害は、単に摂食の問題にとどまらず、身体の健康、日常生活、社会生活に大きく影響します。

 

 

 

鑑別診断

 

神経性過食症:過食性障害には神経性過食症と同じく反復性の過食があるが、いくつかの基本的な点で後者と異なる。臨床症状については、神経性過食症にみられる反復的な不適切な代償行動(例:パージング、駆り立てられた運動)は過食性障害では見られない。神経性過食症の人とは異なり、過食性障害の人は典型的には、過食のエピソードとエピソードの間に体重と体型に影響を与える目的で、顕著なあるいは持続的な食事制限を行うことはない。しかし、過食性障害の人はダイエットを度々試みていることを報告することもある。過食性障害は治療への反応という点でも神経性過食症とは異なる。改善率は一貫して、神経性過食症の人よりも過食性障害の人の方が高い。

[解説]大きく異なる点は、まずは代償行動(嘔吐が代表的です)があるかないかです。過食性障害にはそういった行動はみられません。また、神経性過食症よりも過食性障害の方が治りやすいとされています。

 

 

肥満:過食性障害は過体重および肥満と関連しているが、肥満とははっきり区別されるいくつかの重要な特徴を持っている。まず、体重および体型の過大評価の程度が、この障害のない肥満者よりもこの障害のある肥満者で高い。第二に、精神疾患の併存率が、この障害のない肥満者と比べてこの障害のある肥満者の方が有意に高い。第3に、過食性障害に対する証拠に基づいた心理治療で長期間の良好な転帰が認められているが、このこととは対照的に肥満には有効な長期的治療がない。

[解説]過食性障害は代償行動がないため、一見肥満と似ているように見えると思いますが、複数の相違点があります。具体的には上述の通りですが、イメージとしては「病」に支配されているかどうかがわかりやすいと思います。過食性障害という「病」に支配されていると、平常の肥満ではみられない症状が出現します。逆に肥満は正常であるがゆえに、効果的な「治療」は存在しません。

 

 

双極性障害及び抑うつ障害群:食欲と体重の増加は、抑うつエピソードの基準の中にも、抑うつ障害群と双極性障害群に対する非定型の特徴の特定用語にも、含まれている。抑うつエピソードという状況における摂食の増加は、抑制不能と関連があることもあればないこともある。二つの障害の全ての基準を満たせば、両方の診断を下すことができる。過食とその他の障害された摂食症状が双極性障害との関連で見られる。二つの障害の全ての基準を満たせば、両方の診断を下すべきである。

[解説]過食性障害に限らず、摂食障害とうつ病/躁うつ病の関連性は高率に認められます。摂食障害を治療する際には、常にうつ病/躁うつ病の存在がないか確認しながら行っていく必要があります。

 

 

境界性パーソナリティ障害:過食は、境界性パーソナリティ障害の定義の一部である衝動的行動の基準に含まれている。もし二つの障害の全ての基準を満たせば、両方の診断を下すべきである。

[解説]境界性パーソナリティ障害は摂食障害にも関連していますし、うつ病/躁うつ病にも関連しています。これらがオーバーラップすることはしばしば認められる事実です。

 

 

 

併存症

 

過食性障害は、神経性過食症と神経性やせ症の併存症と同じ程度に意味のある精神科併存症と関連している。最もよく見られる併存障害は、双極性障害群、抑うつ障害群、不安症群であり、それより低い程度で物質使用障害群がある。精神科併存症は過食の重症度と関連しているが、肥満の程度とは関連がない。
[解説]これまでの項目でも述べられていますが、過食性障害が単体で存在していることは多くなく、その他の精神障害と併存していることは度々みられます。治療の際も、それを念頭に起きながら進めていくことになります。

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